日本経済新聞の連載「疫病の文明論」が示した「文化と文明に対する理解の多様さ」

5月4日(月、祝)から5月13日(水)まで、日本経済新聞は7回にわたって「疫病の文明論」を掲載しました[1]-[7]。

7回の記事では、絵画、文学、建築、政治、演劇、歴史などの観点から疫病と人類の関わりが検討されており、いずれも興味深いものでした。

その一方で、「文明論」という表題にもかかわらず、各回の内容はむしろ「人類と疫病が文化にいかなる影響か」という側面が強いものでした。

こうした記事の特徴は、筆者が文明と文化が連続したものであると捉えていることを示唆し、文化と文明の関係に対するもう一つの理解、すなわち精神的な所産を文化とし、物質的所産を文明とする立場を採らないことを推察させます。

実際には、企画した側としては前者の意味ではなく後者の関係において文明を規定していたであろうことは、第1回の導入の「繰り返し人類を襲ってきた疫病は、文明のあり方に根源的な問いを突きつけてきた。」[1]という一文からも明らかです。

それだけに、今回の特集は、図らずも文化と文明に対する理解の多様さを示したものと言えるかも知れません。

[1]描かれた恐怖. 日本経済新聞, 2020年5月4日朝刊24面.
[2]文学の力. 日本経済新聞, 2020年5月5日朝刊24面.
[3]緊急時の社会学. 日本経済新聞, 2020年5月6日朝刊24面.
[4]病の表象を見る. 日本経済新聞, 2020年5月8日朝刊32面.
[5]西洋史に学ぶ. 日本経済新聞, 2020年5月11日朝刊28面.
[6]変わる建築. 日本経済新聞, 2020年5月12日朝刊34面.
[7]中国の歴史. 日本経済新聞, 2020年5月13日朝刊36面.

<Executive Summary>
What Is a Relationship between "Civilisation" and "Culture"?: Seven Examples of The Nihon Keizai Shimbun (Yusuke Suzumura)

The short featured series entitled "Civilization Theory of Epidemic" was run on The Nihon Keizai Shimbun on 4th through 13th May 2020. In this series a relationship between "civilisation" and "culture" is described by each author.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?