NHK交響楽団第2005回定期公演

2月9日(金)、10日(土)、NHKホールにおいてNHK交響楽団の第2005回定期公演が行われ、第1日目の様子がNHK FMで実況中継されました。

今回はワーグナーの『ジークフリートの牧歌』とリヒャルト・シュトラウスの交響詩『英雄の生涯』が演奏されました。指揮は大植英次でした。

大植がNHK響の定期公演に出演するのは1999年6月の第1382回以来24年8か月ぶりのことです。

前回は「海外にポジションを持つ日本人若手指揮者シリーズ」として上岡敏之が第1383回を、大勝秀也が第1384回を担当しました。

当時の大植は1998年9月に音楽監督を務めていたミネソタ管弦楽団との来日公演を実現し、これからの音楽界を支える逸材と思われたものでした。

実際、私も1998年9月24日に行われたミネソタ管の公演をサントリーホールで鑑賞し、その軽やかながら勘所を押さえた音楽作りに大いに期待した次第です。

その後、朝比奈隆の逝去を受けて大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督を務めたことは一面において大抜擢であり、他面では将来を嘱望された存在にふさわしい人事でした。

それだけに約25年ぶりにNHK響の定期公演に出演したことは、大植がこの四半世紀の間にどのような経験を重ね、指揮者としていかなる発展を遂げたかを知るには格好の手掛かりとなりました。

第1曲目の『ジークフリートの牧歌』は説明の必要もない佳曲であるとともに、ワーグナーが大編成の作品だけでなく室内楽の分野でも卓絶した力量を備えていることを示す一曲です。

そのような作品の絶妙に重ねられた音のひだを一枚ずつ剥がしてゆき、再び一つの音楽にまとめ上げる大植の姿はあたかも優れた外科医のようであり、一篇の交響曲を聞くかのような濃厚な演奏を実現しました。

また、『英雄の生涯』は楽団から濁りのない音を引き出すとともに、各奏者が劇的な音楽を劇的に演奏する環境を整えたところは、大植の手腕の確かさを物語ります。

しかも、時に苦悩し、時に格闘する英雄の姿を豊かな表情とともに聞き手に届ける様子は『英雄の生涯』の持つある種の歌劇的な要素をも描き出しており、聞き慣れた作品に新たな相貌を与えるものでした。

わずか2曲ではあったとしても、この25年の間に大植が演奏会場においても歌劇場においても優れた実績を残してきたことが改めて確認された、今回の公演でした。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 2005th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 2005th Subscription Concert at the NHK Hall on 9th and 10th February 2024 and the first day was broadcast via NHK FM on 9th February 2024. In this time, they performed Wagner's Siegfried Idyll and Strauss' Ein Heldenleben. Conductor was Eiji Oue.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?