NHK交響楽団第1966回定期公演

昨日、NHKホールにおいてNHK交響楽団の第1966回定期公演が行われ、公演の模様をNHK FMの実況中継で鑑賞しました。

今回演奏されたのはシューベルトの交響曲第1番と第6番で、指揮はヘルベルト・ブロムシュテットでした。

シューベルトの交響曲といえば「未完成」と「グレート」の2曲は演奏会に欠かせないものの、その他の作品が演奏される頻度は少なく、特に初期の作品に至っては取り上げられる機会そのものがまれであるといっても過言ではありません。

NHK響にとっても事情は同じながら、シュターツカペレ・ドレスデンとシューベルトの交響曲全集を録音した実績を持っているのがブロムシュテットです。

1981年の最初の共演以来、様々な作品を取り上げて来た両者が初めて挑んだシューベルトの2つの交響曲は、ブロムシュテットの豊かな経験とNHK響のしなやかな演奏能力とが融合することで、奏者にとっても聞き手にとっても珍しい作品から、よりよい演奏を生み出しました。

音楽そのものとしての線が細く、歌曲的とも言える第1番に対し、形式が整えられるた第6番という作品の特徴を踏まえ、後者の弦楽器の編成を一回り大きくした点は、ブロムシュテットの理解の鋭さを示しています。

これにより、第1番については、音楽の展開を明瞭に描き出すことが出来ましたし、第6番も層の厚い演奏により、構成力の向上とシューベルトの成長そのものを表現することに成功しました。

また、特に木管楽器が素朴ながら伸びやかな演奏を行うことは、聞き手が10代から20代前半にかけてのシューベルトの瑞々しい感性を追体験することを可能にしました。

日頃の音楽活動の中心である定期公演の中で演奏頻度の低い作品を取り上げることは、一面において今季からNHK響のCプログラムが休憩を設けず70分から80分程度の公演となった結果、演奏時間の点で手頃な作品を積極的に取り上げるようになった結果であると言えるでしょう。

一方で、40年以上にわたり共演を重ねて来た両者だからこそ新しい取り組みも進んで行えるという、相互の信頼の深さが、今回の選曲には現れていました。

それだけに、今回の公演は、ブロムシュテットとNHK交響楽団が、これまで以上に意欲的な演奏活動を行うことを期待させものだったのです。

<Executive Summary>
Stage Review: NHK Symphony Orchestra the 1966th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 1966th Subscription Concert at the NHK Hall on 21st October 2022 and broadcasted via NHK FM. In this time they performed Schubert's 1st and 6th Symphonies. Conductor was Herbert Blomstedt.

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