NHK交響楽団2021年4月東京芸術劇場公演

今夜は、NHK FMで今年4月16日(金)に行われたNHK交響楽団の2021年4月東京芸術劇場公演の実況録音を聴取しました。

今回は前半にハイドンの交響曲第95番とモーツァルトのオーボエ協奏曲、後半にシューマンの交響曲第1番「春」が演奏されました。オーボエ独奏は吉井瑞穂、指揮は鈴木雅明でした。

昨年10月の公演でNHK響と初めて共演した鈴木は、2回目の登場となる今回の公演では緻密な譜面の理解に基づいて演奏を進め、ロジャー・ノリントンやクリストファー・ホグウットなど、これまでNHK響を指揮したいわゆる「古楽系指揮者」と通じる切り詰めた節回しを重ねることで音楽の集約力を高める一方、要所を押さえた表現により作品の輪郭をより鮮やかに描き出していました。

こうした鈴木の音楽作りに対して、独奏の吉井も正確な運指と特に緩徐部を丁寧に仕上げることで呼応し、モーツァルトのオーボエ協奏曲を含み笑いの湛えた演奏にしました。

鈴木の持ち味が遺憾なく発揮されたのは後半のシューマンで、第1楽章冒頭の序奏で聞き手の注意を引き付けることに成功すると、最後まで躍動感と旋律の明朗さを失うことがなく、作品の持つ魅力を引き出すことに成功したのでした。

新型コロナウイルス感染症の拡大によって当初予定していた定期演奏会の中止を余儀なくされ、外国から指揮者を招聘することも難しくなる中で、一方で新進の人材を登用し、もう一方でこれまで共演の機会のなかった古参を起用するNHK響にとって、鈴木雅明の2度目の登壇は緊急的な措置が新しい可能性を切り拓いた顕著な一例と言うことが出来るでしょう。

<Executive Summary>
Stage Review: NHK Symphony Orchestra April Concert at the Tokyo Metropolitan Theatre (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the April Concert at the Tokyo Metropolitan Theatre on 16th April 2021 and broadcasted via NHK FM on 21st April 2021. In this time they performed Haydn's 95th symphony, Mozart's Oboe concerto and Schumann's 1st symphony. Solo oboe was Mizuho Yoshii and conductor was Masaaki Suzuki.

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