「過去最低の出生率」をわれわれはどのように考えるべきか

昨日、厚生労働省が2023年の人口動態統計を発表し、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が過去最低となる1.20になりました[1]。

合計特殊出生率は2022年まで7年連続で低下していたため、昨年も低下したことは驚くべきことではありません。

また、日本だけでなく他の先進諸国においても、かつての性別の違いに基づく家庭内や社会での役割のあり方が変化したことなどから出生率が低下していることも事実です。

あるいは、当局の支援などによって一時は出生率が回復していたフランスやフィンランドなどで再び数値の低下が生じていることも見逃せません。

これは、出生率は社会や経済の発展に伴って変化するものであり、少なくとも現時点では永続性のある少子化対策は見出されていないことを示唆します。

しかし、過去最低という表現が人々に与える衝撃は小さくないものですし、少子化対策を政権の最重要課題の一つに掲げる岸田文雄首相にとっても看過できないことは明らかです。

奇しくも、昨日は参議院本会議において改正子ども・子育て支援法が与党の賛成多数で可決・成立しました。

今後も日本を含む世界各国は少子化対策として様々な政策を実施することになりますし、昨日の子ども・子育て支援法の改正はそのような当局の取り組みの一つの重要な手掛かりとなります。

それでも、即効性のある対策に乏しく、しかも出生率を根本的に改善し、定着させる方法も見出されていない点を直視しないのであれば、これからも出生率の低下が発表されるたびに少子化対策の実効性への疑問が出され続けることでしょう。

その意味で、我々に求められるのは、少子化対策は途中で放棄されるべきではなく、これまでと同様にこれからも様々な政策が打ち出されることが必要であるとともに、出生率を顕著に改善させるのは容易ではないということなのです。

[1]令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)を公表します. 厚生労働省, 2024年6月5日, https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/dl/gaikyouR5houdou.pdf (2024年6月6日閲覧).

<Executive Summary>
What Is the Meaning of Japan's Lowest Birthrate Recorded in 2023? (Yusuke Suzumura)

The Ministry of Health, Labour and Welfare released the Vital Statistics of 2023 on 5th June 2024 and Japan's birthrate recorded the lowest points. On this occasion, we examine the meaning of the result of the statistics.

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