松下真一の存在に光を当てた意義深い『クラシックの迷宮』の特集

去る10月29日(土)にNHK FMで放送された『クラシックの迷宮』は、「松下真一生誕100年 ~NHKのアーカイブスから~」と題し、今年10月1日に生誕100年を迎えた松下真一の作品のうち、初期の活動に焦点を当てた特集が組まれました。

交響曲、室内楽曲、声楽曲と松下の各種の作品を取り上げつつ、作風に大澤壽人の影響の強さを指摘する点は、大澤の作品を現代に蘇らせた片山杜秀先生ならではの視点でした。

また、作曲家としての活動の初期に相当する1950年代は武満徹と競い合う間柄であったものの、後に数学者として位相解析学の分野で名を成したこともあり、今日、松下の作品が各種の公演で演奏される機会はまれとなっています。

いわば音楽史の間に埋もれたかのような存在である松下に着目し、他の作曲家との関係を踏まえつつ番組を構成することは、見るからに困難を伴うものです。

そのような背景を考えれば、今回の企画は、忘れ去られた一人の音楽家を特集しただけでなく、現在われわれが耳にする同時代の作曲家の数が限定的であり、より多くの人々がいることを改めて教える、教育的に高い価値をも有するものであったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Highlights a Composer Hidden in the Shadow of History (Yusuke Suzumura)

A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcasted via NHK FM featured Professor Shinichi Matsushita. It might be a meaningful opportunity for us to understand a composer's efforts and achievements who is hidden in the shadow of history of Japanese composers

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