こども家庭庁は実効的な組織となるか

今日の参議院本会議において、内閣府の外局としてこども家庭庁を設置する関連法案が可決、成立しました[1]。新組織の発足は2023年4月の予定です。

こども家庭庁は首相の直轄組織で、専任閣僚や長官が配置されるとともに、厚生労働省や地方自治体などからも職員を集め、300人規模の体制となる見込みです。また、厚生労働省や内閣府の子ども関係の部局の大部分が新組織に移管され、「子ども政策の司令塔」[1]となる見込みです。

少子化は将来の日本のあり方を左右する問題だけに、現に子どもを持ち、あるいはこれから子どもを持つことを希望する人たちが懸念なしに子どもを産み、育てる環境を整備することは重要です。

その意味で、今回のこども家庭庁の設置は時宜にかなった政策であることが分かります。

一方、厚生労働省が所管する保育所と内閣府の認定こども園がこども家庭庁の所管となるものの幼稚園については文部科学省の管轄のままとなったことは、長年の懸案事項である幼保一体化の問題の解決に当局者が消極的あるいは否定的であることを示唆し、はたしてどこまで少子化対策や子ども政策に本気であるかを疑わせます。

何より、現在の国会議員の中で少子化問題や子ども政策に精通した上に、調整力や包容力を備えた人物には限りがあるため、たとえこども家庭庁に専任閣僚が置かれるとしても、配置される人物がどこまで主体性を発揮できるかは不明です。

むしろ、昨年9月1日に設置されて以降、今もって存在感に乏しいデジタル庁を参照するなら、こども家庭庁も大臣になりたいと思いつつ入閣できないでいる与党の議員に与える椅子を一つ増やすただけに終わり、実際には次長以下の官僚が主導する、実効性に乏しい組織になることさえあり得ます。

それだけに、こども家庭庁には、現時点での期待の低さを覆すような、傑出した存在感と実行力を発揮することが願われます。

[1]こども家庭庁設置法が成立 子ども政策の司令塔を創設. 日本経済新聞, 2022年6月15日, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA14CPL0U2A610C2000000/ (2022年6月15日閲覧).

<Executive Summary>
Will the Agency for Children and Families Be Able to Become an Effective Organisation? (Yusuke Suzumura)

The House of Councilors enacts a bill to set up the Agency for Children and Families on 15th June 2022. In this occasion we examine an effectiveness of the Agency and it's issues to solve the low birth rate in Japan.


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