安倍前首相の「衆参両院議運での謝罪」は「桜問題の終わり」となるか

昨日、安倍晋三首相が衆参両院の議院運営委員会に出席し、自らの後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、首相在任中の国会答弁が事実と反する内容であったと訂正し、陳謝しました[1]。

本件については、2016年から2019年の開催分について施設側への支払額のうち約700万円を安倍氏側が負担した動機が不明であり、また差額を補填した費用には安倍前首相の預金が充てられたなど、不透明な要素が多いと言えます。

あるいは、衆議院調査局によると安倍氏が首相在任中に衆参両院で行った本件に関する答弁は、少なくとも118回にわたり事実と異なる内容を含んでいたとされます[1]。

その様な意味で、議院運営委員会が終了した後に「説明責任を果たすことができたのではないか」という認識を示した安倍前首相[1]や「安倍氏は国会で説明をされている」とする菅義偉首相の指摘[2]は、必ずしも実態に即してはいないことが推察されます。

また、飲食などの内訳が書かれた明細書について、施設側には存在するが営業上の秘密があるので公開を前提にする場合は提出できないという趣旨の安倍前首相の説明は「営業上の秘密」が通常行われている値引きを大幅に上回る割引が行われていた可能性を示唆しますし、補填費用についても例えば官房機密費が用いられているために安倍氏自身だけでなく前政権で官房長官であった菅首相も事態の早期の収拾を図っていることもあるでしょう。

もちろん、こうした事態は看過されるべきではなく、国権の最高機関である国会において行政府の長たる内閣総理大臣が真実と異なる答弁を行ったことに対してしかるべき制裁を加えることは、立法府の権威を保つためにも必要な措置となります。

そのためにも、今後、国会において事態の全容を追求し、問題の所在を明らかにすることが求められると言えるでしょう。

[1]安倍氏「関与せず」一点張り. 日本経済新聞, 2020年12月26日朝刊4面.
[2]「安倍氏は説明」. 日本経済新聞, 2020年12月26日朝刊4面.

<Executive Summary>
What Is a Primitive Problem of the "Sakura Scandal"? (Yusuke Suzumura)

Ex-Prime Minister Shinzo Abe apologised for his false answers concerning on the "Sakura Scandal" at the both Diet on 25th December 2020. It is not the end of the issue and the start of the end of the issue, but only the end of the start, since he does not say what he has to say on the issue.

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