『N響ザ・レジェンド』が示した「マタチッチの幅の広さ」

昨夜は19時20分から21時までNHK-FMで『N響ザ・レジェンド』が放送されました。

今回は「マタチッチの「田園」」と題し、NHK交響楽団の名誉指揮者であったロヴロ・フォン・マタチッチがNHK響を指揮した録音のうち、ベートーヴェンの序曲「レオノーレ」第3番、交響曲第6番『田園』、ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』より第1幕への前奏曲、そしてベートーヴェンの大フーガが取り上げられました。録音された時期は、大フーガを除く3曲が1967年11月25日の新潟県民会館のこけら落とし公演、大フーガが1967年12月26日に東京文化会館で行われたNHK響の特別演奏会でした。

マタチッチと言えば1984年3月に行われたNHK響の第925回定期公演におけるブルックナーの交響曲第8番に象徴されるように、ブルックナーを得意とする指揮者として広く知られています。

一方、昨日の番組の中で解説の池辺晋一郎さんが指摘したように、NHK響の定期公演への最後の出演となった1984年3月23日、24日の第927回において取り上げたのがブラームスの交響曲第1番とベートーヴェンの交響曲第7番であったことは、マタチッチにとってベートーヴェンも得意な作曲家の一人であったことをわれわれに教えます。

実際、大フーガにおいて、躍動感と抒情性を併せ持つ旋律を的確に処理しながら力強く展開する音楽は、マタチッチがベートーヴェンの譜面を細部まで正確に把握していることを示していました。また、ワーグナーは冒頭から一貫して軽快さを失わない演奏に仕上げることで、民衆喜劇としての『ニュルンベルクのマイスタージンガー』にふさわしい、そして本人自身は至極健全ながら時代の様相に合わせて憂鬱な雰囲気を演出していたワーグナー自身が持つ楽天さを描き出すことに成功していたと言えるでしょう。

改めてマタチッチの指揮者としての幅の広さが実感された、この日の放送でした。

<Executive Summary>
Matačić and the NHK Symphony Orchestra Listened from Historical Records (Yusuke Suzumura)

A radio program of the NHK-FM entitled with "NHK Symphony Orchestra the Legend" was on the air on 1st February 2020. In this time, Beethoven's Leonore overture no. 3, the 6th symphony, Wagner's Prelude to the 1st Act of Die Meistersinger von Nürnbergwere, and Beethoven's Große Fuge were played. Conductors were Lovro von Matačić.

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