『ベストオブクラシック』の特集「東アジアのオーケストラ」の持つ大きな意味

去る6月5日(月)から今日まで、NHK FMの『ベストオブクラシック』では、特集「東アジアのオーケストラ」が放送されました。

これは、東アジアで活躍する楽団のうち、韓国のKBS交響楽団、中国の香港フィルハーモニー管弦楽団、杭州フィルハーモニー管弦楽団、上海交響楽団の4つの楽団の公演を紹介する企画でした。

アンコールを除く、各楽団の公演の演奏曲は以下の通りでした。

(1)KBS交響楽団(1)
コダーイ/ガランタ舞曲
バルトーク/ピアノ協奏曲第3番(ピアノ独奏:ジャン・エフラム・バヴゼ)
ラフマニノフ/交響的舞曲
指揮:ヨエル・レヴィ
収録日:2022年6月30日

(2)KBS交響楽団(2)
ドヴォルザーク/序曲『謝肉祭』
ブラームス/ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲(ヴァイオリン独奏:キム・スーヤン、チェロ独奏:キム・ボムジュン)
ブラームス/交響曲第4番
指揮:クリストフ・エッシェンバッハ
収録日:2022年年4月27日

(3)香港フィルハーモニー管弦楽団
エルガー/『コケイン』序曲
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏:ニン・フェン)
リヒャルト・シュトラウス/交響詩『英雄の生涯』
指揮:ワシーリ・ペトレンコ
収録日:2023年1月6日

(4)杭州フィルハーモニー管弦楽団
モーツァルト/フルート協奏曲第1番(フルート独奏:レヴィン・チャン)
ブルックナー/交響曲第4番「ロマンティック」
指揮:リン・ダーイエ
収録日:2022年6月26日

(5)上海交響楽団
ブラームス/ピアノ協奏曲第2番(ピアノ独奏:ハオチェン・チャン)
ブラームス/ピアノ四重奏曲(管弦楽版、編曲:シェーンベルク)
指揮:ロン・ユー
収録日:2022年12月11日

KBS響については、コダーイのガランタ舞曲の堀の深い演奏はとりわけ印象深く、楽団の力量の高さが実感されるとともに、キム・スーヤンのヴァイオリンとキム・ボムジュンのチェロによるブラームスのバイオリンとチェロのための二重協奏曲は出色の出来栄えでした。

香港フィルはいずれの作品も淡々とした表情で演奏しつつ、時折現れる熱情的な様子は大変印象的で、洗練された仕上がりとなりました。

杭州フィルは、モーツァルトの彩りの豊かさとブルックナーの伸びやかで均整の取れた演奏が、聞き応えのある公演に繋がりました。

そして、上海響の演奏では端正で飾り気がなく、それでいて艶やかさのある、輪郭の豊かなブラームスを堪能することが出来ました。

来日する外国の楽団の数を比較するだけで、欧州が中心であり、米国がこれに次ぎ、東アジアの楽団の存在感は乏しいのが実情です。また、『ベストオブクラシック』に限っても、外国の楽団の公演を取り上げる際に、東アジアの楽団が選ばれることはまれです。

それだけに、1週間にわたり東アジアの楽団の公演を紹介したことは聴取者にとってだけでなく、番組そのものにとっても大きな意味を持つものでした。

今後、近年成長著しい東南アジアやオセアニアの楽団、さらに南米や中近東、アフリカまで対象を広げ、「世界のオーケストラ」が定期的に取り上げられる日が訪れることを期待させた、今回の特集でした。

<Executive Summary>
Featured Programme 'Orchestras in East Asia' of the "Best of Classic" Has an Important Meaning for the Listners and the Programme Itself (Yusuke Suzumura)

The NHK FM's "Best of Classic" broadcasted the featured programme 'Orchestras in East Asia' on 5th to 9th June 2023. It is an important project not only for the listners but also for the programme itself, since we have limited knowledge and information about these orchestras and through this project we can expand our idea with them.

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