日米首脳会談の共同声明は「東京オリパラ」にいかなる影響を与えるか

現地時間の4月16日(金)、米国大統領府でジョー・バイデン大統領と菅義偉首相が初の日米首脳会談を行い、「新しい時代のための日米グローバル・パートナーシップ」と題する共同声明を公表しました[1]。

共同声明では、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに両岸問題の平和的解決を促す」と明記され、1969年のリチャード・ニクソン大統領と佐藤栄作首相による日米会談以来52年ぶりに共同声明の中に「台湾」の表記が用いられました[2]。

当時は反共主義を基本としていたニクソン大統領と親台派であった佐藤首相による日米首脳会談で台湾が言及されることは当然ながら、これまで中台問題に比較的関心の薄かったバイデン大統領と菅首相による共同声明だけに、それだけ日米両国、とりわけ米国が対中関係を重視していることが推察されます。

ところで、共同声明では今回に開催される予定の東京オリンピック・パラリンピックも言及されています。

すなわち、共同声明は次のように述べています。

President Biden supports Prime Minister Suga’s efforts to hold a safe and secure Olympic and Paralympic Games this summer. Both leaders expressed their pride in the U.S. and Japanese athletes who have trained for these Games and will be competing in the best traditions of the Olympic spirit.

上記の箇所を訳出すると「バイデン大統領は、今夏に安全かつ確実なオリンピックとパラリンピックを開催しようとする菅首相の努力を支援する。両首脳は大会のために練習を重ね、オリンピックの精神という最高の伝統を受け継いで参加する米日の競技者を誇りとすることを表明した。」となります。

今回の共同声明が東京オリンピック・パラリンピックに言及したことは日本側の成果です。

その一方で、バイデン大統領が支援を表明したのが大会の「開催」そのものではなく「開催への努力」であったことは、米国側の慎重な姿勢の表れと言えます。

すなわち、大会の開催権は東京都に付与されているとはいえ、実施の有無は開催都市では決定できない中で、どれほど日本政府が開催に積極的であるとしても最終的に中止となることはあり得る選択肢です。

それだけに、日本側に歩調を合わせて「開催を支援する」と表明したにもかかわらず最終的に大会が中止されれば、米国側、とりわけバイデン大統領の面目が損なわれかねません。

このように考えれば、今回の共同声明は、様々な意味で興味深い内容を含んでいると言えるでしょう。

[1]U.S.- Japan Joint Leaders’ Statement: "U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA". The White House, 16th April 2021, https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/04/16/u-s-japan-joint-leaders-statement-u-s-japan-global-partnership-for-a-new-era/ (accessed on 17th April 2021).
[2]日米声明「台湾海峡」明記 初の会談、中国の威圧に反対. 日本経済新聞, 2021年4月17日, https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE170BH0X10C21A4000000/?n_cid=BMSR2P001_202104171038 (2021年4月17日閲覧).

<Executive Summary>
What Is a Meaning of U.S.- Japan Joint Leaders' Statement of 2021? (Yusuke Suzumura)

The US-Japan Summit Meeting was held and the Joint Leaders' Statement was available on 16th April 2021. In this occasion we examine a meaning of the Statement.

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