米球界で起きた「大規模窃盗疑惑」についてわれわれが忘れてはならない点は何か

現地時間の3月20日(水)、大リーグのロサンゼルス・ドジャースに所属する大谷翔平選手の弁護士が、同球団に所属し大谷選手の専任通訳を務めていた水原一平氏を違法な賭博に関与し、大谷選手の資金について「大規模な窃盗」(massive theft)を行ったとして告発したことを明らかにするとともに、球団も水谷氏を解雇したことを公表しました[1]。

本件は、球界を代表する「スーパースター」[1]である大谷選手に関するものだけに米国だけでなく日本でも高い関心を集めています。

もちろん、水原氏を告発したり解雇したことは本件が尋常ならざる出来事であることを明確に示します。

それだけに、当事者ではないわれわれにとって重要なのは、今後告発を受けた司法当局がどのように対応するかということです。

すなわち、「大規模な窃盗」の事実があるのか否か、もしある場合はいかなる動機により、どのような方法で「犯行」がなされたのか、もしない場合はなぜ事実と異なる声明が公表されたのか、そしてその理由はどこにあるのかといった点は、揣摩臆測ではなく事実に基づいて検討されなければなりません。

それとともに、今回の一件はRule 21のように大リーグ機構が定める規程と推定無罪の原則のいずれにも注意を払う必要があります。

何故なら、前者はこれまで大リーグが経験した「野球と賭博」の歴史を踏まえなければその意味を十分に理解することは難しいものですし、後者は特に今後の報道において興味本位の取材を排するためにも不可欠だからです。

換言すれば、われわれは今回の件について、どれほど著名な人に関わる出来事であるとしても、他の案件と同様に事柄そのものに即して考える努力を怠ってはならないのです。

そして、人々の耳目を集める一件だからこそ、依拠すべき原理や原則が何であるかを改めて思い起こさなければならないことを、改めて強調する次第です。

[1]Shohei Ohtani’s attorneys accuse interpreter of ‘massive theft’ tied to alleged gambling. The Los Angeles Times, 20th March 2024, https://www.latimes.com/california/story/2024-03-20/gambling-story (accessed on 21st March 2024).

<Executive Summary>
Some Important Viewpoints to Examine the "Massive Theft Scandal" (Yusuke Suzumura)

Representatives for Mr Shohei Ohtani of the Los Angeles Dodgers announced that Mr Ippei Mizutani, the interpretator for Mr Ohtani, accused by the reason of ‘massive theft’ and the team fired him on 20th March 2024. On this occasion, we examine some important viewpoints to understand this scandal.

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