【評伝】ルー・ブロックさん--輝く笑顔の盗塁王

現地時間の9月6日(日)、元大リーグ選手のルー・ブロックさんの逝去が公表されました。享年81歳でした。

ブロックさんは2015年に糖尿病の悪化により左足の一部を切断し、2017年には多発性骨髄腫を発症しており、その逝去については、代理人であるディック・ジッツマン氏がAP通信に対して明らかにしたものの、死因などは不明となっています[1]。

シカゴ・カブスと1960年に契約したブロックさんは、1961年にマイナー・リーグC級セント・クラウド・ロックスで128試合に出場して打率.361、14本塁打、82打点、38盗塁と優れた記録を残したことでカブスに昇格して以来、1979年まで19年間大リーグで活躍しました。

1964年6月15日にジャック・スプリング、ポール・トスとともに、ボビー・シャンツ、アーニー・ブロリーオ、ダグ・クレメンスとの3対3でセントルイス・カーディナルスに移籍してからは、俊足巧打の外野手として名を馳せ、通算8回の盗塁王を獲得するとともに、通算3023安打を記録して資格1年目の1985年に野球殿堂に選出されたことは周知の通りです。

特にブロックさんの代名詞である盗塁については、1966年から1969年までと1971年から1974年まで、2度にわたり4年連続で盗塁王となり、1974年に当時の最多盗塁118個、通算でも938盗塁を達成し、人工芝が普及したことで機動力が求められるようになった1970年代の大リーグを牽引する選手の一人となりました。

実際、1961年から1979年までの19年間を対象に、ブロックさんが在籍したナショナル・リーグと大リーグ全体の記録とブロックさんの成績を比較すると、盗塁の分野におけるその存在の大きさが分かります(表1)。

表1 ルー・ブロックとナショナル・リーグ及び大リーグの盗塁数の比較(1961-1979年)

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すなわち、1966年がナショナル・リーグの盗塁数の10.04%、大リーグの5.09%を占めたことを筆頭に、19年間で平均してリーグの5.07%、大リーグの2.52%となる盗塁を記録しています。

こうした数字をみると、単年と通算の盗塁数はリッキー・ヘンダーソン選手に更新されたものの、現在もナショナル・リーグの最高記録を残しているのもうなずけるところです。

また、盗塁の成功率は通算で平均75.3%と、リッキー・ヘンダーソン選手の約80.7%に比べて低いものでした。

しかし、これはブロックさんの走塁術が未熟であったということを意味しません。むしろ、出塁するとリードは控えめにし、完全に静止することで投手の意表を突いて盗塁するというブロックさんならではの戦術の結果でした。

そして、引退後は生花店を営むかたわらでABCテレビの解説者を務め、さらにキリスト教への信仰を深めたブロックさんの特徴については、カーディナルス時代の同僚であったテッド・シモンズさんが訃報に接して出した談話が象徴的に示しています[2]。

「ブロックさんの特徴は2つあります。1つは地球上で最も大きく、最も明るく、最も活気のある笑顔であり、もう1つは、確かに何度も怪我をしていたにもかかわらず、私は一度もブロックさんの怪我について知らなかったということです」

[1]Lou Brock, Baseball Hall of Famer Known for Stealing Bases, Dies at 81. The New York Times, 6th September 2020, https://www.nytimes.com/2020/09/06/sports/baseball/lou-brock-dead.html (accessed on 7th September 2020).
[2]Tim Kurkjian, The greatness of the late Lou Brock went beyond baseball. ESPN, 6th September 2020, https://www.espn.com/mlb/story/_/id/29826660/the-greatness-late-lou-brock-went-baseball (accessed on 7th September 2020).

<Executive Summary>
Critical Biography: Mr. Lou Brock, the Brightest and Fastest Baseball Player in the 1970s (Yusuke Suzumura)


Mr. Lou Brock, a former outfielder of the MLB and a member of the National Baseball Hall of Fame, had passed away at the age of 81 on 6th September 2020. Mr. Brock was the fastest player in the 1970s and had a brightest smile.

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