NHK交響楽団第1967回定期公演

昨日、NHK交響楽団の第1967回定期公演がサントリーホールで行われ、公演の模様がNHK FMで実況中継されました。


今回は、前半にグリーグのピアノ協奏曲、後半がニルセンの交響曲第3番「広がり」でした。ピアノ独奏はオリ・ムストネン、ニルセンのソプラノ独唱が盛田麻央、バリトン独唱が青山貴で、指揮はヘルベルト・ブロムシュテットでした。


グリーグは、冒頭の広く知られた、そして緊張感の強い旋律をムストネンが力強く透明感のある打鍵によって表現して音楽全体の調子を整えると、起伏に富む作品の細部まで表情豊かに演奏しました。


伴奏は一貫して独奏の劇的な演奏を刺させる役割に徹し、ムストネンのしなやかな音楽作りをより一層際立たせることを実現しました。


第1楽章の冒頭から聞き手の注意を惹きつけるニルセンは、この作品を得手とするブロムシュテットの綿密な楽譜の理解が随所に示されており、特に木管楽器の安定した吹奏が音楽の彩りに豊かな表情を与えました。


盛田と青山も、母音唱法による歌唱がもたらす一種の幻想的な雰囲気をよく表現するなど、独唱者の務めをよく果たしていました。


今でブロムシュテットが担当するNHK交響楽団の2022-2023シーズンの公演は終わりとなります。


今年6月に骨折に見舞われ、指揮台に椅子を置いて公演に臨み、舞台袖からの入退場時も奏者に支えられるというように、ブロムシュテットの健康状態は往時のように万全とは言い難いのが実情です。


しかし、1981年以来40年を超えるNHK交響楽団との関係を顧みるまでもなく、長年の経験と実績に基づく特徴ある作品の理解と演奏者との深い一体感は、何物にも代えがたいものです。


それだけに、来季以降もブロムシュテットの来日と登壇の実現が大いに期待されるところです。


<Executive Summary>
Stage Review: NHK Symphony Orchestra the 1967th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)


The NHK Symphony Orchestra held the 1967th Subscription Concert at the Suntory Hall on 26th October 2022 and broadcasted via NHK FM. In this time they performed Grieg's Piano Concerto and Nielsen's 3rd Symphony. Solo piano was Olli Mustonen, solo soprano was Mao Morita, and solo bariton was Takashi Aoyama. Conductor was Herbert Blomstedt.

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