「運の強さ」で考える「安倍首相の連続在任日数新記録樹立」

本日、安倍晋三首相の内閣総理大臣としての連続在任日数が2799日となり、佐藤栄作氏の連続2798日を超えて歴代最長記録を樹立しました。

民主党政権時代に停滞した日米関係の強化や、景気の回復などを実現したことは安倍首相の顕著な功績と言えるでしょう。

2012年9月の自民党総裁選挙では、再選を目指した谷垣禎一総裁が党内調整に失敗して出馬を辞退したこと、さらに第1回投票において141票に止まり、199票の石破茂元防衛大臣の後塵を拝したものの石破氏の得票数が過半数に達しなかったために決選投票となり、最終的に108票対89票で勝利したこと[1]が示すように、ある種の「運の強さ」があったことは周知の通りです。

「運の強さ」については、安倍首相の祖父である岸信介氏が1956年12月14日の自民党総裁選挙で第1回投票で最多得票を獲得しながら過半数に及ばなかったため決選投票となり、いわゆる「2位・3位連合」により、第3位であった石井光次郎総務会長と連携した石橋湛山通産大臣に258票対251票で敗れたものの、病を得た石橋首相が1957年2月に退陣したことで政権を手に収めたことを連想させるものです。

また、2012年12月以来、衆参両院の通常選挙の全てに勝利し、党内の反対派や野党の批判の声を押さえて安全保障関連法制など、自らの望む政策を実現してきたことも、ある意味で安倍首相の「勝負強さ」を物語ります。

実際、「地方創生」、「女性活躍」、「一億総活躍」、「人生100年時代」と政権の要となる政策を次々に取り換えて「やっている感」[1]を演出する手法は、掲げられた政策が達成されたか否かという点への注目度を低下させる効果を生み出したという意味で、斬新な方法であったと言えるでしょう。

これに加えて見逃せないのが、野党のあり方です。

2012年12月の総選挙によって下野した民主党がその後も党勢を立て直せないだけでなく、政権時代のあり方を徹底して検証することがないまま民進党に党名を変更し、さらに党内の路線対立もあって最終的に立憲民主党と国民民主党に分裂したことは、安倍首相に優位に国政選挙を行う環境を与えました。

このように考えれば、2007年9月に退陣して以来、捲土重来を期し、実際に5年後に復権した権力へのあくなき欲求と合わせ、「運の強さ」は安倍首相が日本の憲政史上の記録を塗り替えるための大きな原動力となっていたと言えるのです。

そして、「運も実力のうち」という俚諺に従うなら、「運の強さ」を持ち合わせている安倍首相は、それだけ実力を備えているということになるでしょう。

[1]小西德應, 竹内桂, 松岡信之編著, 戦後日本政治の変遷. 北樹出版, 2020年, 158頁.
[2]政権運営「やってる感」息切れ. 日本経済新聞, 2020年8月23日朝刊4面.

<Executive Summary>
Why Can Prime Minister Shinzo Abe Establish a New Record 2,799 Straight Days in Office? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Shinzo Abe establishes a new record 2,799 straight days in office on 24th August 2020. In this occasion we examine his efforts and achievement focusing on himself as a man with a destiny.

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