【開催報告】野球文化學會第6回研究大会

昨日、野球文化學會第6回研究大会が開催されました。今回は3年ぶりとなる対面形式で実施されるとともに、オンライン形式による配信も併用されました。対面形式の会場は法政大学市ヶ谷田町校舎T511教室でした。

今回も、第1部を一般研究発表、第2部をシンポジウムとし、第1部では8件の報告が行われ、「野球文化伝播の150年--明治から令和、そして新たな時代へ」と題した第2部では基調講演と個別報告2件が行われました。

一般研究発表の報告者と論題並びに外報は以下の通りでした(座長:中村哲也理事[高知大学]、鈴村裕輔会長[名城大学])。


(1) 広尾晃(フリーライター)/独立リーグ経営の現在地と将来
トップリーグから独立しているリーグ、球団としての独立リーグに焦点を当て、日本の独立リーグの現状と今後の進路のあり方が検討された。

(2) 朝西知徳(羽衣国際大学)/高校野球指導における新しい打者評価法の提案と教育的実践
教育の一環としての高校野球の指導において、生徒の活躍をよりよく評価する指標として「純出塁率」と「仕事率」の概念が提唱された。

(3) 石村広明(桃山学院大学)/ベースボール授業履修者の投能力について
教養教育での体育の講義を履修する大学生15人を対象とした投球の調査結果を検討し、スライド成分の大小が投能力を評価するひとつの指標となる可能性が指摘された。

(4) 金森潤熙(運動理論物理学者)/野球指導革命
指導者が体罰・暴力などに依存せずに指導を行うために、野球指導者のライセンス制の導入などを通し、スポーツ指導の現場から悪弊を一掃してよりよい環境を整えることの重要性が指摘された。

(5) 松原弘明(電気通信大学)/「2004年の球界再編」はどのように語られたのか?-論文・雑誌のレビューから―
2004年に起きた近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブに関する「球界再編問題」について、問題がどのように扱われてきたかを検討し、球団合併に反対していたファンの姿が後景化したことが指摘された。

(6) 塩田芳久(西日本新聞社)/ライオンズのライオンを追え―プロ野球ファンサービス史序説
本物のライオンをマスコットにした、日本球界における最初で最後の事例である1974年の太平洋クラブライオンズを事例とし、ファンサービスのあり方を検討するとともにマスコットのライオンのその後が紹介された。

(7) 田所明憲・中村哲也(高知大学)/NPBと独立リーグにおけるセカンドキャリアの現状と課題~四国アイランドリーグplusとBCリーグ調査結果を踏まえて~
四国アイランドリーグplusの選手へのアンケート調査及びBCリーグとNPBを対象とする調査の結果を比較することで、球界におけるセカンドキャリア指導と今後の展開のあり方が指摘された。

(8) 伊藤正浩(野球郷土史家)/野球地域史が拓く、野球史研究の新しい地平について
史実に基づき、客観的に地元の歴史を研究する分野としての地域史という考えに基づき、野球史における地域史の可能性を検討するとともに、野球文化學會が中心となって各地域の野球史家の研究を横断的に繋ぐことが提起された。


また、第2部のシンポジウムの登壇者と論題並びに概要は以下の通りでした(座長:筆谷敏正理事[東京ドーム])


(1) 基調講演
池井優(慶應義塾大学名誉教授・野球文化學會顧問)/野球伝来150年--ウィルソンから大谷翔平まで

1872年の野球の伝来から現在に至るまでの150年の歴史を踏まえつつ、「組織とスポンサー」「戦争と野球」「高度経済成長と娯楽」「多極化と国際化」などの視点から日本における野球の発展が概括された。

(2) 報告(1)
永田陽一(ノンフィクション作家)/日米ハワイ野球交流史の中の日系二世選手

草創期の日本の職業野球を支えた日系選手19選手を対象とし、日本側と日系二世選手側の双方の事情から、日系二世選手が活躍出来た背景が紹介された。

(3) 報告(2)
井上裕太(弘前学院大学講師)/野球150年と文化

「市井の人々から見た野球」「正岡子規、野球害毒論争に着目した野球」という観点から、野球の娯楽としての発展と日本野球史と文化の関わりが検討されるとともに、オーラルヒストリーの重要性や野球文化の広がりへの期待など、野球文化の将来的展望が指摘された。


野球伝来150年という節目に野球文化の広がりと可能性を示す研究発表と講演がなされたことは学会にとってだけでなく野球文化学にとっても重要な機会となりました。

また、会場とオンラインをあわせて延べ50名を超える方たちが参加されたことも有り難いことでした。

なお、今大会の詳報については、学会誌『ベースボーロジー』第17号に掲載される予定です。

<Executive Summary>
The Forum for Researchers of Baseball Culture the 6th Research Conference (Yusuke Suzumura)

The Forum for Researchers of Baseball Culture (FRBC) held the 6th Research Conference at Hosei University and via Zoom on 11th December 2022. In this time 8 research presentations, 1 keynote speech and 2 reports were available.

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