『今日は一日“スポーツアニメ”三昧』で思ったいくつかのこと

昨日は、NHK FMで12時15分から21時まで『今日は一日“スポーツアニメ”三昧』が放送されました。

今回は、「スポーツアニメのテーマソング」に焦点を当て、野球、サッカー、テニス、バスケットボール、競技自転車など、様々な分野の作品の主題歌、終わりの歌が紹介されました。

番組の中で最も印象的であったのは声優の草尾毅さんが「アニメの主題歌、エンディングはミュージックビデオのようなもので、1980年代まではこれだけを聞けば物語の概要が分かり、一時はオープニングとエンディングだけ見るアニメもあった。物語と直接関わらず、歌がイメージとして使われるようになったのは『スラムダンク』あたりから」という趣旨の発言でした。

草尾さんご自身が主演したテレビアニメ『スラムダンク』を参照しながら日本のテレビアニメにおける主題歌と終わりの歌の持つ役割の変化を概観した指摘は実に含蓄に富み、意義深く思われました。

実際、1960年代から1970年代までの主人公や物語の題材を連呼する主題歌が、『魔境伝説アクロバンチ』のように物語の概要を抒情的に伝える技法が用いられるようになった1980年代を経て、物語のために主題歌が作られるのではなく、音楽事務所との連携や物語との関係ない作品を起用する傾向が明らかになった1990年代以降の状況を考えれば、草尾さんの指摘は、テレビアニメにおける主題歌の役割の推移を的確にとらえたものであると言えるでしょう。

その意味で、制作者の意図とは異なるかも知れないものの、草尾毅さんの発言は、今回の番組で得られた最大の収穫でした。

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of "Today Is the Day for "Sports Anime"" (Yusuke Suzumura)

The NHK-FM broadcasted a programme Today Is the Day for "Sports Anime" on 3rd May 2021. It might not only be a radio programme for "Sports Anime" and its works but also a kind of brief history of Japanese animation for sports.

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