『N響ザ・レジェンド』「シュタインのベートーベン」が示した「名誉指揮者の時代」

本日、19時20分から21時までNHK FMで『N響ザ・レジェンド』を聴取しました。

今回は、「シュタインのベートーベン」と題し、NHK交響楽団の名誉指揮者であったホルスト・シュタインが指揮するベートーヴェンの交響曲第8番、交響曲第6番『田園』、そして『エグモント』序曲が取り上げられました。

交響曲第6番の演奏後に解説の池辺晋一郎さんが「シュタインは曲を巨視的に見通して指揮をする」という趣旨の指摘を行ったように、シュタインは譜面を正確に読み込むことを通して作品の構造を的確に把握しつつ、生きいきとした音楽をもたらします。これは、コレペティトゥーアや合唱指揮者から出発し、作品を背後から支えたシュタインの経験に裏打ちされた様式と言えるでしょう。

このようなシュタインが生み出す音楽の魅力の一端については、1998年11月5日(木)にバンベルク交響楽団と演奏したブラームスの交響曲第4番で私も実感したものです[1]。

ところで、今回の放送の最後に、池辺さんは名誉指揮者としてNHK響を支えたヴォルフガング・サヴァリッシュ、オットマール・スウィトナー、そしてシュタインの3人の特長について、サヴァリッシュは総合大学、スウィトナーは音楽の実直なところを引き出す、シュタインは音楽の人間性を伝える、と評しました。

司会の檀ふみさんが「この3人がいれば完璧」と応じたように、確かにアレクサンダー・ルンプフが常任指揮者を辞任した1965年7月から1996年9月にシャルル・デュトワが着任するまでの31年にわたってNHK響を支えた中心的な指揮者は、サヴァリッシュ、スウィトナー、シュタインでした。

それだけに、シュタインの演奏を取り上げることでいわば「名誉指揮者の時代」に焦点が当てられたことは、ある意味で『N響ザ・レジェンド』という番組の名にふさわしいものであったと思った次第です。

[1]鈴村裕輔, 旧稿再掲--ホルスト・シュタインさんの没後十年に際して. 2018年8月17日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/be31a87151d47d155a39c36cb23e0d4e?page_id=2804 (2020年8月1日閲覧).

<Executive Summary>
"NHK Symphony Orchestra" Mentions the Age of Honorary Conductors with Concerts by Horst Stein (Yusuke Suzumura)

A radio program of the NHK-FM entitled with "NHK Symphony Orchestra the Legend" was on the air on 1st August 2020. In this time Beethoven's 8th and 6th symphonies and Egmont overture. Conductor was Horst Stein.

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