「知床半島沖海難事故」からわれわれは何を学ぶべきか

去る4月23日(土)に北海道知床半島沖で起きた観光船KIZUNA Iの遭難事故について、昨日運航会社である知床遊覧船の桂田精一社長が記者会見を行いました。

会見では、同社の定める運行基準を超える中で出港を強行したことや機器や備品の不十分さなど、桂田氏自身と会社としての安全管理の不徹底や危機管理意識の不十分さが示されました[1]。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大以前には年間6000万円ほどの売り上げがあったものの2020年には半減したということで、利益追求が今回の遭難事故に繋がったという指摘もあります[2]。

真相はいずれ明らかになるであろうものの、事故が発生しなければ安全管理の不十分さや危機管理意識の希薄さといった事態を利用者が知ることは困難であったことも疑いえないところです。

もとより、観光遊覧船を運行させる同業他社は多くが法令や諸規程を遵守し、人命を第一に日々の業務を行っていることに議論の余地はありません。

しかし、KAZU Iの遭難事故を特殊な企業の異常な行為とするなら、われわれは今回の出来事から何も学ばない惧れがあります。

その意味で、観光遊覧船にとどまらず、航空、電車、自動車など、関連諸分野の事業者には、今一度日常の業務に弛緩や法令違反などがないかを確認することが求められると言えるでしょう。

[1]観光船 危機意識甘く. 日本経済新聞, 2022年4月28日朝刊43面.
[2]船長離職相次ぐ. 日本経済新聞, 2022年4月28日朝刊43面.

<Executive Summary>
What Is an Important Lesson for Us Learning from the "KIZUNA I Incident"? (Yusuke Suzumura)

The "KIZUNA Incident" occurred on 23rd April 2022 is miserable marine accident. In this occasion we examine an important lesson for us learning from the incident.

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