「大谷翔平選手の国民栄誉賞辞退」で考える栄典制度とその問題

11月22日(月)、2021年の大リーグのアメリカン・リーグ最優秀選手(MVP)となったロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が、日本政府から国民栄誉賞の授賞を打診され、辞退していたことが分かりました[1]。

今回の打診は2001年のイチロー選手(当時シアトル・マリナーズ)以来20年ぶり2人目となる日本生まれの大リーグ選手によるMVP受賞を受けたものでした。

これに対し、大谷選手は「これからピークを迎える5-7年くらいが、もっともっと勝負じゃないかと思う」[1]と、1回のMVPの受賞を理由とした表彰は時期尚早であるという趣旨の意向を示しました。

確かに大リーグにおけるMVP受賞はその年の全ての選手の中で最も価値ある活躍をした証拠ですし、日本だけでなく大リーグの愛好家からも広く支持されている大谷選手は、「この表彰は、広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えることを目的とする。」[2]という国民栄誉賞の目的にも合致します。

しかし、これまでの受賞者を眺めると、功成し名を遂げながら、文化勲章や文化功労者、あるいは叙勲の対象となりにくい人たちが選ばれているという傾向があるのは疑い得ないところです。

また、受賞しても、すでに確立された社会的名声を有する人にとっては、さらなる社会的地位の向上をもたらす余地が少なく、積極的な意義が十分ではないことも推察されます。

その意味で、むしろ必要なのは1回受賞したら終わりとなる国民栄誉賞のような表彰制度ではなく、現在は廃止されている生前叙位の再開などを含む、功績を適時適切に繰り返し評価できる制度の設計かも知れません。

2001年に栄典制度が変更されてから20年を経た現在だからこそ、授与する側にとっても受け取る側にとってもよりよい制度のあり方が模索されることが期待されます。

[1]MVPでも「まだ早い」. 日本経済新聞, 2021年11月23日朝刊31面.
[2]国民栄誉賞表彰規程. 第1条.

<Executive Summary>
What Is a Meaning of Mr. Shohei Ohtani's Declination of Accepting the People's Honour Award? (Yusuke Suzumura)

Mr. Shohei Ohtani of the Los Angeles Angels declines to accept the People's Honour Award on 22nd November 2021. In this occasion we examine a meaning of his reaction and the future of Japanese Honour System.

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