『クラシックの迷宮』の特集「芥川也寸志の「やぶにらみの音楽論」が伝える芥川也寸志の多岐にわたる活躍

今夜のNHK FMの『クラシックの迷宮』では、「芥川也寸志の「やぶにらみの音楽論」~NHKのアーカイブス」と題し、芥川也寸志が1956年から1960年までラジオ第二で放送された『音楽クラブ』の不定期企画「やぶにらみの音楽論」を中心とした特集が組まれました。

作曲家としてだけではなく、文筆家、司会者、放送作家など多くの分野で活躍し、戦後の日本の政治、社会、文化などに大きな影響を与えた存在として芥川也寸志を捉えるのが、『クラシックの迷宮』の司会者である片山杜秀先生の視点です。

そして、そのような芥川の名前を広く知らしめることになったのが毎週日曜日の午前10時から放送されていた30分番組『音楽クラブ』と「やぶにらみの音楽論」であり、そのような番組がどのような内容であったかを当時の録音を紹介することで再確認しようというこのが、今回の特集の趣旨でした。

「やぶにらみの音楽論」のうち、「リズムの秘密」「旋律の話(音楽と民族性)」「放送音楽の話」の3つのを回を通して示されるのは、これらの話題が当時は毎回の放送のための題材であったかもしれないものの、やがて芥川自身の中で熟成され、1971年の『音楽の基礎』(岩波書店)へと結実したであろうということです。

例えば、「放送音楽の話」でラジオ放送における音楽の持つ重要性や作曲家にとってのラジオ放送の意味が語られたことは、『音楽の基礎』においてかつて総合芸術は歌劇であり、現在は映画やテレビ番組であるという『音楽の基礎』の考え方の原型と言えるものです。

あるいは、東京音楽学校の学生であった時の軍事教練の話に始まり、進軍ラッパと日蓮宗の念仏の対比を行い、あるいは人類の歴史の原初において労働の際にリズムが必要であったと指摘する「リズムの秘密」も、『音楽の基礎』で取り上げられる事例を連想させます。

こうした点は、今も読み継がれる名著の淵源と完成までの由来を知るという点からも意義深いものでした。

それとともに、八面六臂の活躍と片山先生が称される芥川の多岐にわたる活躍は、ある意味で片山先生自身の多面的で精力的な活動そのものの先駆の一つでもあります。

今回の放送は2025年が芥川也寸志の生誕100年にあたるだけでなく、芥川にとって重要な活動の場の一つであったラジオが放送を開始してから100年を迎えることを予祝するという意味でも、いつにも増して重要な内容になったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
The Featured Programme of the "Labyrinth of Classical Music" Tells an Important Role of Akutagawa Yasushi to the History of Japanese Radio (Yusuke Suzumura)

The NHK FM's programme "Labyrinth of Classical Music" featured Akutagawa Yaushi's radio programme named "A Crossed-Eye Person's Theory of Music" on 30th March 2024. On this occasion, we could understand Akutagawa's remarkable contributions to the development of Japanese media

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