「防衛費増額問題」において注意すべき問題は何か

昨日、岸田文雄首相は浜田靖一防衛大臣と鈴木俊一財務大臣との会談の中で、防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)比で2%に増額することと財源の確保を指示しました[1]。

ロシアによるウクライナへの侵攻によって国際秩序が動揺するだけでなく、台湾を巡るいわゆる「台湾有事」が懸念され、北朝鮮によるミサイル発射実験など、日本を取り巻く安全保障の環境は深刻さを増しています。

それだけに、1976年の三木武夫内閣以来、おおむねGDPの1%以内を目安としてきた防衛費を増額することは、所与の条件に対応した、現実的な取り組みと言えるでしょう。

また、財源に関しても2026年度までは赤字国債の発行による対応を認めつつ、幅広い税目での国民負担により安定した財源を確保するという考え[2]も、国防が政治家や自衛隊だけの問題ではなく、日本に住む一人ひとりに深くかかわる事項であることを鑑みれば、現実に即した対策となります。

一方で、法人税だけでなく所得税やたばこ税などが増税されれば、国民の間から反発が起きることは容易に予想されます。

何より政府が率先して歳出の削減に取り組まなければ、国民の理解を得ることは難しくなります。

その意味で、岸田首相が歳出改革を優先し、その結果として安定的な財源措置を行うことが重要であると主張したこと[2]は妥当な判断です。

何より、近年、政治家が好んで用いる丁寧に説明するといった表現が、実際には何が丁寧な説明であるかを定義しないために、往々にして自らの主張を繰り返すことで責務を果たした証拠とされる点には注意が必要です。

たとえ現在の日本が置かれた状況から不可欠な措置であるとしても、市民一人ひとりに具体的な税負担を強いる以上、国防政策上問題ない範囲において開示できる情報を明示し、具体的で分かりやすく説明することが不可欠です。

それだけに、岸田文雄首相をはじめ、当局者がどのような説明を行うのか、その内容を含めて今後の動向が注視されます。

[1]首相、財源先送り論封じる. 日本経済新聞, 2022年11月29日朝刊4面.
[2]首相「防衛費2%、27年度」. 日本経済新聞, 2022年11月29日朝刊1面.

<Executive Summary>
What Is a Meaning to Increase Defense Budget to 2% of GDP? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Fumio Kishida required to Finance Minister Shunichi Suzuki and Defense Minister Yasukazu Hamada to prepare of increasing Defense Budget to 25 of GDP on 28th November 2022. On this occasion we examine a meaning of this decision.

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