NHK交響楽団第2001回定期公演

去る1月13日(土)、14日(日)にNKKホールにおいてNHK交響楽団の第2001回定期公演が行われ、1月18日(木)にNHK FMで第1日目の実況録音が放送されました。

今回は、前半にシチェドリンの編曲によるビゼーのバレエ音楽『カルメン組曲』、後半にラヴェルの組曲『マ・メール・ロワ』とバレエ音楽『ラ・ヴァルス』が演奏されました。指揮はトゥガン・ソヒエフでした。

13曲からなるビゼーは管楽器を用いず、弦楽器と打楽器のみという編成が特徴的で、『カルメン』だけでなく『アルルの女』の「ファランドール」が挿入されるなどシチェドリンの独特の編曲が印象深い作品です。

どちらかといえば『カルメン』の悲劇的な側面に焦点が置かれた構成で、各曲の輪郭が明瞭なだけにややもすれば統一感を失いがちながら、「運命の動機」を効果的に配置することで聞き手に物語の展開を容易に辿らせるとともに劇的な原曲により深い陰影を引き出す表情を与えていました。

演奏そのものは、第1曲目の「導入」での集約力の高さが第2局目の「踊り」でやや緩み、足元のおぼつかなさが眼だったものの、第3曲目の「第1間奏曲」で体勢を立て直してからは作品の起伏を巧みに表現し、弦楽器と打楽器のみという編成が一見すると独特であっても不自然なものではないことを示しました。

特に第7曲目「第2間奏曲」や第11曲目「アダージョ」の細やかな愛情と哀切さを湛えた旋律を控え目に演奏しつつ勘所を押さえたところなどは、ソヒエフの音楽作りの確かさを物語るものでした。

一方、後半のラヴェルは、フランスの作曲家を得意とするソヒエフらしさがひときわよく表れた、伸びやかな演奏となりました。

『マ・メール・ロワ』は第5曲目「妖精の園」の華やかな演奏が5つのおとぎ話を連ねた作品をひときわ鮮やかなものにしましたし、『ラ・ヴァルス』は溢れ出る躍動感が聞き手の注意を引き付けて離しませんでした。

この日は歌劇やバレエ音楽を得意とし、フランスの作曲家の音楽も知悉するソヒエフの持ち味がよく発揮された、後味の良い公演となりました。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 2001st Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 2001st Subscription Concert at the NHK Hall on 13th and 14th January 2024 and broadcasted via NHK FM on 13th January 2024. In this time, they performed Bizet's Carmen Suite edited by Shchedrin, Ravel's Ma mère l'Oye and La valse. Conductor was Tugan Sokhiev.

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