【追悼文】アレクサンドル・ヴェデルニコフさんを巡るいくつかの思い出

去る10月29日(木)、デンマーク王立歌劇場首席指揮者でミハイロフスキー劇場音楽監督兼首席指揮者のアレクサンドル・ヴェデルニコフさんが逝去しました。享年56歳でした。

ヴェデルニコフさんは、現在のモスクワ市交響楽団に改称する前のロシア・フィルハーモニーの芸術監督やボリショイ劇場の音楽監督を務めるなど、ロシアの気鋭の指揮者として活動していました。

私がヴェルデルニコフさんの指揮を目にしたのは、2014年1月10日にNHK交響楽団の第1772回定期公演に客演した時のことでした。

この時の曲目は、グラズノフの演奏会用ワルツ第1番、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲とバレエ音楽『眠りの森の美女』の抜粋で、ヴァイオリン独奏はジェニファー・コーが務めています。

余韻を湛えながらも情緒に流れない手堅さと、譜面を隅々まで把握した後に作品を丁寧に作り上げる懐の広さが印象的なヴェデルニコフさんの指揮は、聞きなれた作品に精彩を加え、演奏の頻度の少ない音楽も巧みに仕立てるものでした。

2011年の定期公演初登場以来、2014年、2016年と定期的に共演し、かつてのエフゲーニ・スヴェトラーノフのようにNHK交響楽団と息の長い関係を築くと思われヴェデルニコフさんだけに、新型コロナウイルス感染症による合併症のためとはいえ、56歳での早逝が惜しまれるところです。

改めてご冥福をお祈りします。

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Mr. Alexander Vedernikov (Yusuke Suzumura)

Mr. Alexander Vedernikov, the Principal Conductor of the Danish Royal Opera and the Music Director and Principal Conductor of the Mikhailovsky Theatre, had passed away at the age of 56 on 29th October 2020. On this occasion I express miscellaneous impressions of Mr. Vedernikov.


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