NHK交響楽団第1942回定期公演

昨日は、18時から20時までNHK FMでNHK交響楽団の第1942回定期公演を聴取しました。会場は東京芸術劇場コンサートホールでした。

今回は、前半にウェーバーの歌劇『魔弾の射手』序曲とリストのピアノ協奏曲第2番、後半にフランツ・シュミットの交響曲第2番が演奏されました。ピアノ独奏はアレッサンドロ・タヴェルナ、指揮は沼尻竜典でした。

ウェーバーのホルンの重奏やクラリネットの独奏といった序盤の要所を担当する楽器が的確に演奏するとともに、弦楽器の伸びやかな弓の運びが作品の華やかな結末を伸びやかに表現しました。

また、リストは作曲者自身の高い演奏能力を反映した技巧性と、情感の豊かな展開とを特長とする作品だけに、奏者に求められる水準は自ずから高くなります。そのような中でタヴェルナは抒情性と緊迫感の巧みな切り替えにより、終始聞き手の注意を惹きつけて離しませんでした。

第3曲目のシュミットはNHK響だけでなく世界各地の楽団にとっても演奏の頻度は決して高くない作品です。その一方で、師であるブルックナーに由来するオルガンを彷彿とさせる響きと構成の壮大さ、ブラームスに影響された作曲技法、シューベルトに連なる詩情、さらにチェロ奏者としてマーラーをはじめとする同時代の作曲家の種々の作品を演奏した経験は、シュミットの作品をウィーンのロマン派の清華とも言えるものです。

こうしたシュミットの交響曲第2番に対して楽譜の正確な理解と分析で臨んだ沼尻の揺るぎない指揮は時に奏者に寄り添い、時に奏者の内奥に入り込むもので、荘厳さの中に秘められた含み笑いという作品の持つ特徴を引き出すことに成功しました。

当初予定されていたファビオ・ルイージが今年10月末の時点で入国条件を満たす待機期間を確保できなくなりました。そのため、今年9月以来となる定期公演への出演を果たしたのが沼尻でした。

代役ではあったものの、緊急の措置にもかかわらず充実した公演を実現したことで、沼尻とNHK響の今後の共演に対する期待が高まった、今回の定期公演でした。

<Executive Summary>
Stage Review: NHK Symphony Orchestra the 1942nd Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 1942nd Subscription Concert at the Tokyo Metropolitan Theatre on 13th November 2021 and broadcasted via NHK FM. In this time they performed Weber's Der Freischütz overture, Liszt's Piano Concerto No. 2 and Franz Schmidt's 2nd Symphony. Solo piano was Alessandro Taverna and conductor was Ryusuke Numajiri.

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