『N響ザ・レジェンド』で実感した「14年の時を経て一つの演奏を聞きなおすことの妙味」

昨日は、19時20分から21時までNHK FM放送で『N響ザ・レジェンド』を聴取しました。

今回は、2006年5月12日(金)に行われたNHK交響楽団の第1569回定期公演から、スタニスラフ・スクロバチェフスキの指揮によるブルックナーの交響曲第8番(ノヴァーク版)の録音が放送されました。

この演奏については、私も会場のNHKホールで鑑賞しており、手控えによれば、その折の寸評は以下のようなものでした。

NHK交響楽団第1569回定期公演を聞く。今回はスタニスラフ・スクロバチェフスキの指揮によるブルックナー/交響曲第8番(ノヴァーク版)を取り上げた。余情を排した線の太い鋭角的な演奏は懐の広さこそないが、ブルックナー理解のひとつのあり方を示したものといえよう。特に、たゆまぬ旋律の運びと重なり合う響きを丁寧に扱った3楽章は全曲中の白眉であった。一方、4楽章は速度指示の変化を忠実に再現するあまり曲が寸断され、ぎこちなさと唐突感が全面に現れた演奏。もし何らかの積極的な意図があれば一考に値するが、即物的な演奏を徹底した結果であればその効果のほどには疑問を呈せざるを得ない。また、曲の「盛り上がり」の頂点が最後の3音ではなくその前の金管の強奏部に置かれたのも、「後味」の点では物足りなさがつのる演奏であった。

昨日の放送からは、第4楽章の終わり方が淡白であったように感じられました。

その一方で、全体として均整の取れた、しかも推進力の強い演奏の迫力は録音によってますます増しているようでした。

もとより、会場での実演と録音とは自ずから異なるものの、14年の時を経て一つの演奏を聞きなおすことの妙味を実感したひと時ではありました。

<Execiutive Summary>
What Is a Meaning of 14 Years?: In the Case of Skrowaczewski and the NHK Symphony Orchestra (Yusuke Suzumura)

A radio program of the NHK-FM entitled with "NHK Symphony Orchestra the Legend" was on the air on 25th April 2020. In this time, Bruckner's 8th symphony edited by Nobak and Beethoven's Fidelio overture. Conductors was Stanisław Skrowaczewski.


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