『クラシック音楽館』の「日本のオーケストラ特集」が示した可能性は何か

昨日は、21時から23時までNHK教育テレビで『クラシック音楽館』を視聴しました。

今回は、7月19日(日)の放送に続き、「日本のオーケストラ特集」の第2回目で、オーケストラ・アンサンブル金沢、日本センチュリー交響楽団、九州交響楽団、京都市交響楽団、群馬交響楽団の演奏が取り上げられました。

各団の演奏に対する寸評は以下の通りです。

オーケストラ・アンサンブル金沢の演奏は井上道義の指揮によりベートーヴェンの『エグモント』序曲を演奏しました。井上らしい計算された演劇的な指揮と全体に短めな節回しにより、均整の取れた演奏に仕上がっていました。

飯森範親の指揮による日本センチュリー交響楽団のハイドンの交響曲第77番の演奏は、瀟洒で朗らかな音楽となっていました。また、服部緑地野外音楽堂での「星空ファミリーコンサート」の様子も、大変微笑ましいものでした。

九響倶楽部の活動も紹介された九州交響楽団が取り上げたのは小泉和裕の指揮によるブルックナーの交響曲第1番第3楽章で、泰然として懐の深い演奏を披露しました。

京都市交響楽団は広上淳一の指揮でマーラーの交響曲第1番「巨人」の第4楽章を披露し、年を追うごとに軽やかさとしなやかさが増す広上の棒と京都市響の端然とした演奏が鮮やかな対比をなしていました。

最後に登場したのは設立初期の移動音楽教室で撮影された貴重な写真も印象的であった群馬交響楽団で、高関健により行われた演奏会形式によるヴェルディの歌劇『ファルスタッフ』の抜粋は、第400回記念となった定期演奏会にふさわしい、充実したものでした。

このような各地の交響管弦楽団の演奏を全国放送の番組が取り上げる意義については、すでに本欄の指摘するところです[1]。

それとともに、首都圏の楽団の演奏活動とテレビやラジオを通して放送される状況を考えると、新たな側面が見えてきます。

例えば、NHKから財政的な支援を受け、定期公演やその他の公演がテレビやラジオで放送されるNHK交響楽団や、ラジオ番組『ブラボー!オーケストラ』の公開収録を行うことで定期的に演奏が取り上げれられる東京フィルハーモニー交響楽団などを除けば、東京都に拠点を置くたの職業楽団の演奏が放送される機会は決して多くはありません。

もちろん、放送局を利用する以外にはレコードやCD、あるいはDVDなどの録音や録画を通してしか演奏活動を人々に伝える手段がなかった時代に比べ、現在では各団が主体的に演奏の様子を公開する方法を備えています。そのため、必ずしもテレビやラジオでの放送に拘泥する必要はないかも知れません。

あるいは、契約の兼ね合いもあって全国放送を行うことが難しい場合もあるでしょう。

それでも、各団の活動がより多くの人々に理解されるための一助としてテレビやラジオなどの在来の媒体の持つ意味は依然として小さくないことを考えれば、今回の「日本のオーケストラ特集」が対象を広げる、もしくは他の番組が類似の企画を行うなどして、全国の職業楽団の活動がより積極的に取り上げられることが期待されるところです。

[1]鈴村裕輔, 『クラシック音楽館』の「日本のオーケストラ特集」が持つ大きな意義. 2020年7月20日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/a832d515cee4d1dec3c89799ea97a33c?frame_id=435622 (2020年7月27日閲覧).

<Executive Summary>
A TV Programme "Classical Music Hall" Has a Possibility to Take More Important Role to Promote Activities of the Orchestras in Japan (Yusuke Suzumura)

A TV programme Classical Music Hall broadcasted by NHK Educational featured selected concerts of local cities in Japan on 26th July 2020. It is remarkable efforts for each local orchestra and it might be able to take more important role to promote activities of the orchestras in Japan.

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