「野球の試合は愉快」を体現した大リーグの第91回オールスター戦

現地時間の7月13日(火)、米国コロラド州デンバーのクアーズ・フィールドで大リーグの第91回オールスター戦が行われ、5対2でアメリカン・リーグがナショナル・リーグを下しました。

これで、アメリカン・リーグは2013年から8回連続で勝利を収め、通算成績でも46勝43敗2分とナショナル・リーグに勝ち越しています。

今回のオールスーター戦ではトロント・ブルージェイズのヴラディーミル・ゲレーロ・ジュニア選手が中堅に約132メートルの本塁打を放ち、最優秀選手となりました。

ゲレーロ・ジュニア選手は22歳で、1969年にシンシナティ・レッズのジョニー・ベンチ選手が21歳で受賞したのに次いで、歴代2位の若さでの栄誉となります。

また、オールスター戦としては初めて大谷翔平選手が投手と打者として先発出場し、大谷選手が1回を無安打無得点で抑えて勝利投手となっています。

これに加えて、試合の開始に先立ち今年1月22日に逝去したハンク・アーロンさんの功績を讃え、夫人のビリー・アーロンさんを招いてアーロンさんがアラバマ州モービルから鞄一つを手にして野球選手となることを目指し、ニグロ・リーグを経てミルウォーキー・ブリュワーズに入団して大選手となった様子を描いた絵と、アーロンさんの背番号「44」を描いた作品の序幕が行われたことも、球界を代表するアーロンさんの顕彰として意義深いものでした。

一方、ゲレーロ・ジュニア選手や大谷選手とともに歴史的な出来事として記憶すべきは、両リーグが統一のユニフォームを用いたことです。

従来、オールスター戦は各選手がそれぞれの球団のユニフォームを着用しており、色とりどりのユニフォームが球場内に溢れることがオールスター戦の魅力の一つでもありました。

しかし、今回は本拠地開催となるナショナル・リーグが白地、アメリカン・リーグが濃紺のユニフォームを用い、胸元に各球団の略称とロゴマークが記されたユニフォームが用いられました。

これは、大リーグ機構が2019年にナイキとユニフォーム提供の契約を結んだことによる措置で、選手の間には統一ユニフォームが洗練されていない仕立てとなっていることなどへの不満の声が聞かれます[1]。

もちろん、こうした試みは機構側による収益増加策の一環であり、契約先のナイキも統一ユニフォームの量産品を市販することで新たな利益が生まれることになります。

それとともに、1933年の第1回オールスター戦ではナショナル・リーグが灰色地に濃紺の文字で"NATIONAL LEAGUE"と縫い取った統一ユニフォームを着用して新たな試合への意気込みの強さを示したものです。

こうした故事を踏まえると今回の統一ユニフォームは単なる収益増加策だけに留まらず、球史に基づいた取り組みでもあることが分かります。

次回以降のオールスター戦でも統一ユニフォームが利用されるかは定かではないものの、オールスター戦のような確立された催事についても絶えず新たな話題を作ろうとする大リーグ機構の意気込みが推察されます。

その意味で、今回のオールスター戦も、ジョー・ガラジオラ氏の著書Baseball Is a Funny Gameが示すように、「野球の試合は愉快」ということをわれわれに教えたと言えるでしょう。

[1]A uniform decision? It’s a different look and attitude on All-Star jerseys. Los Angeles Times, 13th July 2021, https://www.latimes.com/sports/story/2021-07-13/mlb-all-star-game-jerseys-nike-tradition (accessed on 14th July 2021).

<Executive Summary>
The 91st MLB All Star Game Is a Funny Game (Yusuke Suzumura)

The 91st All Star Game of the Major League Baseball was held at the Coors Field on 13th July 2021. In this occasion we examine meanings of the Midsummer Classic for us.

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