『今日は一日"サッチモ"三昧』について思ったいくつかのこと

今日は、NHK FMで12時15分から21時15分まで、定時のニュース番組による中断を除き、合計8時間30分にわたり『今日は一日"サッチモ"三昧』が放送されました。

これは、今年生誕120周年と没後50周年を迎える音楽家のルイ・アームストロングを特集し、1953年の初来日時の肉声や東京大学総合研究博物館が所蔵するSPレコードなどの歴史的音源、あるいは定番の作品や著名な演奏を通し、「ジャズの王様」、「サッチモ」として親しまれたアームストロングの実像に迫る企画でした。

解説はジャズ・トランペット奏者の外山喜雄さん、司会はNHKアナウンサーの吾妻謙さんで、選曲・出演・蓄音機の操作が大澤啓さん(東京大学)でした。この他、渡辺貞夫さん、森山良子さん、日野皓正さんら「サッチモ」と進行があった、もしくは「ジャズの王様」の影響を強く受けた各界の著名人が電話で談話を寄せました。

今回の特集に限らず、2021年に節目の年を迎えたルイ・アームストロングは様々な場面で取り上げられています。

それだけに、『今日は一日"サッチモ"三昧』は他の企画との差別化が求められるところで、今回は東京大学総合研究博物館の所蔵品の活用という点に新味がありました。

選曲を担当された大澤啓さんは、2018年5月31日に法政大学江戸東京研究センターの研究会「記号上の復興――エフェメラが形成する戦後東京像」の講師を務められた関係から、私も存じ上げている方です。

ただ、美術史を専門とし、現在は戦後の図像資料などの研究を中心に行っている大澤さんとルイ・アームストロングとはすぐには結び付かなかったものの、1953年に初めての来日を果たしていることなどから、戦後の日本の表象文化や前衛芸術の検討と大衆文化の担い手としての「サッチモ」が関わり合うのかと得心し、興味深くお話に耳を傾けました。

あるいは、外山喜雄さんはルイ・アームストロングが生きた時代の米国の様子を織り交ぜつつ、いかにしてニューオリンズに生まれた少年が音楽に出会い、「サッチモ」から「ジャズの王様」へと変化を遂げ、今も多くの人々に愛されるかを力強く説明されたことも、印象的でした。

何より、8時間30分にわたる特集によりルイ・アームストロングの人となりと音楽の特徴、そして現在の米国の社会や文化への影響などを網羅的に知ることが出来たのは、『今日は一日"サッチモ"三昧』ならではの大きな魅力であったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of "Today Is the Day for "Louis Armstrong"" (Yusuke Suzumura)

The NHK-FM broadcasted a programme Today Is the Day for "Louis Armstrong" on 20th September 2021. It might not only be a radio programme for Louis Armstrong and his works but also a kind of brief history of American History.


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