「中曽根氏の葬儀の経費」で思い出した中曽根康弘元首相を巡るいくつかの逸話

報道によれば、本日、今年10月17日に行われる予定の中曽根康弘元首相の内閣及び自由民主党による合同葬の経費として、令和2年度一般会計予算の予備費から約9600万円を計上することを閣議決定しました[1]。

1947年に国葬令が廃止され、国家に功労のあった者を特旨をもって国葬とすることがなくなったことで、戦後の日本においては天皇を除き1967年の吉田茂のみが唯一の国葬であることは広く知られるところです。

また、内閣総理大臣を5年以上務めた者は慣例により存命中に大勲位を受けており、これまでの受勲者のうち吉田が国葬、佐藤栄作の場合は自由民主党と国民有志による国民葬が行われたことも、周知の通りです。

このように考えれば、約5年務めたことにより戦後3人目となる大勲位の生前叙勲に与った中曽根氏に対して、大勲位受勲者にふさわしい規模と格式により葬儀が執行されることは当然と言えます。

一方で、1997年に大勲位を受けたものの、それ以前に勲一等の叙勲を辞退したことをはじめとして、若手議員の際には自転車で選挙活動を行ったこと、あるいは木造2階建てで八畳一間の議員宿舎に起居し、千代田区九段に新設された議員会館の3Kの部屋を「ヴェルサイユ宮殿のような邸宅」と呼ぶなど、中曽根氏個人としては、生活の質素さが魅力とされることがありました[2]。

鈴木善幸内閣の行政管理庁長官として第二次臨時行政調査会を設置し、土光敏夫氏を会長に迎えて行政改革を断行するとともに、1982年に政権を担当すると国鉄、電電公社、専売公社の民営化を実現するなど、内閣総理大臣としての実績の面でも中曽根氏は行政改革と財政再建に熱心に取り組みました。

その意味で、今回の合同葬及び経費は、過去の事例と故人の生前の勲功に従った、ごく適切なものでありましょう。

以上は、中曽根氏の内閣及び自民党の合同葬の経費の閣議決定という話題で思い出した、いくつかの逸話でありました。

[1]中曽根氏の葬儀に9千万円 政府が閣議決定、予備費から支出. 産経新聞, 2020年9月25日, https://www.sankei.com/politics/news/200925/plt2009250013-n1.html (2020年9月25日閲覧).
[2]御厨貴監修, 渡邉恒雄回顧録. 中央公論新社, 2007年, 410頁.

<Executive Summary>
Miscellaneous Episodes of Professor Dr. Yasuhiro Nakasone (Yusuke Suzumura)

It is reported that a budget of the joint funeral of the Japanese Government and the Liberal Democratic Party for Professor Dr. Yasuhiro Nakasone is 96 million yen on 25th September 2020. In this occasion I remember some episodes of Professor Dr. Nakasone.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?