山本由伸選手が「異例の超大型契約」を締結できた3つの理由

現地時間の12月21日(木)、オリックス・バファローズからポスティングシステムによる大リーグへの移籍を目指していた山本由伸選手がロサンゼルス・ドジャースと契約しました。契約期間は12年間で、年俸総額は3億2500万ドルとなります[1]。

今回の異例ともいえる契約は、フリーエージェントとしてロサンゼルス・エンゼルスからドジャースに移籍した大谷翔平選手が引き上げる形となった選手年俸の相場の大きな流れに乗ったものです。

それでは、具体的にどのような要因から山本選手は高額の契約を結べたのでしょうか。

第一は、上述の通り大谷翔平選手の契約の影響です。

大谷選手の契約は当初5億ドル規模と考えられていたものの、最終的に7億ドルとなりました。

そのため、山本選手も当初の想定以上の高額の契約が提示されても不思議ではないことになります。

第二の理由は、大谷選手の獲得を予定しながら目的を果たせなかった球団が、その資金を山本選手に回す可能性があるということです。

交渉の詳細は各球団と山本選手側の直接のやり取りに限られます。

しかし、もし他の球団も相応の金額を用意するということが想定されれば、山本選手を獲得したい球団は、その想定金額を上回る額を提示しなければなりません。

その際、大谷選手の移籍のために用意していた契約条件を流用すれば、相応の条件を山本選手に提示できることになるのです。

そして、第三の点は、山本選手自身への評価の高さです。

山本選手の年齢は、2024年の開幕時点で25歳です。

高校卒業後すぐにドラフトを経て大リーグ球団と契約を結ぶ選手が大リーグに昇格するまで、平均4年を要します。そして、その選手は、新人王に相当する活躍を示さない限り、大リーグに定着するまでさらに2年ないし3年が必要となります。

このように考えれば、25歳という年齢は高校卒業後すぐに大リーグ球団と契約を結んだ選手が大リーグに定着する場合の平均的な年齢に相当します。

しかも、山本選手は日本のプロ野球とで7年にわたり活躍し、通算70勝29敗、防御率1.82という成績を残しています。

日本のプロ野球界で活躍した投手は、入団から5年程度は日本時代と同様ないしそれに準ずる成績を残すという大リーグ関係者の経験則に照らせば、すでに十分な実績を残し、しかもこれから選手として一層の成長が期待できる20歳代半ばという年齢は、山本選手への評価を高める要因に他ならないのです。

以上のように、今回の契約は一見すると異例のように思われながら、現在の大リーグの動向に照らせば、必ずしも不自然なものとは言えません。

しかしながら、こうした高額の契約は、例えば山本選手が予期せぬ怪我に見舞われた場合や、期待通りの成績を挙げられない場合に、批判の手掛かりを与えることになりかねません。

また、高額の契約のために他球団への移籍やマイナーリーグへの降格を含む処遇を難しくするということも、過去の選手たちの事例が示す通りです。

それだけに、山本由伸選手が今後どのような活躍を示すのか、一層注目されます。

[1]Yoshinobu Yamamoto to sign with Dodgers for $325M over 12 years: 25-year-old NPB ace joins Shohei Ohtani in LA.CBS, 21st December 2023, https://www.cbssports.com/mlb/news/yoshinobu-yamamoto-to-sign-with-dodgers-for-325m-over-12-years-25-year-old-npb-ace-joins-shohei-ohtani-in-la/ (accessed on 22nd December 2023).

<Executive Summary>
Three Reasons Why Mr Yoshinobu Yamamoto Concludes the Great Contract with Dodgers (Yusuke Suzumura)

Mr Yoshinobu Yamamoto, a former pitcher of the Orix Buffaloes, concludes the contract with the Los Angeles Dodgers for $325M over 12 years on 21st December 2023. On this occasion, we examine the three reasons of conclusion of this extraordinal contract.

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