『ブラボー!オーケストラ』が伝えるパシフィックフィルハーモニア東京の発展ぶり

去る10月16日(日)、NHK FMの『ブラボー!オーケストラ』はパシフィックフィルハーモニア東京(PPT)の第152回定期演奏会の実況録音が紹介されました。

今回放送されたのは、公演の前半にあたるトーマス・アデスのピアノと管弦楽のための協奏曲でした。ピアノ独奏は角野隼斗、指揮は飯森範親でした。

2022年4月にそれまでの東京ニューシティ管弦楽団から名称を改め、飯森を音楽監督に迎えたのがPPTです。

それまでどちらかと言えば他の在京の楽団の陰に隠れがちであったニューシティ管ながら、公演の企画や楽団の育成にも手腕を発揮してきた飯森の起用により存在感を向上させているのは、広く知られるところと言えるでしょう。

実際、日本初演となったアデスの協奏曲の独奏者に人気の高さとともに充実した技量と豊かな芸術性を備えた角野を配するという点は、演奏の内容そのものを含め、PPTの発展ぶりをよく示すものでした。

不協和音と半音階的な旋律の多様によって大編成の伴奏の動きが過熱するのを防ぎつつ、頻繁に変化する曲想の表現を独奏に任せることで両者の非対称的な姿を描き出すのがアデスの協奏曲です。

こうした作品に向かい合う角野は、繊細さと軽快さを兼ね備えた、奥行と広がりのある鍵盤捌きによって独奏者の役割を十分に果たしました。

また、伴奏も、時折伴奏との距離が広がる場面があったものの、最後まで音楽の枠組みを崩さず、充実した演奏を実現しました。

来週の放送では公演の後半で演奏されたホルストの組曲『惑星』が紹介される予定です。

前身のニューシティ管時代を含め、『ブラボー!オーケストラ』を含め他の番組でも取り上げられる機会の少ないPPTの演奏がこのような形で放送されることは意義深いことであり、次回の放送も注目されます。

<Executive Summary>
"Bravo! Orchestra" Shows a Significant Development of the Pacific Philharmonia Tokyo (Yusuke Suzumura)

A radio programme "Bravo! Orchestra" broadcasted by the NHK FM on 16th October 2022 picked up the first half of the 152nd Subscription Concert of the Pacific Philharmonia Tokyo. In this time, they performed Thomas Adès' the Concerto for Piano and Orchestra. Solo piano was Hayato Sumino and conductor was Norichika Iimori.

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