「いまよみがえる伝説の名演奏・名舞台」が示唆する『クラシック音楽館』の大きな可能性

去る8月16日(日)、NHK教育テレビの番組『クラシック音楽館』が放送されました。

今回は「いまよみがえる伝説の名演奏・名舞台」と題し、最新の映像リマスター技術を用いてヘルベルト・フォン・カラヤン、レナード・バーンスタイン、カール・ベーム、カルロス・クライバーの指揮による演奏の映像が紹介されました。

各演奏の寸評は以下の通りでした。

最初に紹介されたのはヘルベルト・フォン・カラヤンの指揮によるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏はチャイコフスキーの交響曲第4番の第1楽章で、LDとCDで幾度となく目にし、耳にした内容ながら、改めてカラヤンの手堅い音楽作りの手堅さが実感されました。

2番目に取り上げられたレナード・バーンスタインとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」の第4楽章は、バーンスタイン一流の湧き出る熱情とギネス・ジョーンズ(ソプラノ)、ハンナ・シュヴァルツ(アルト)、ルネ・コロ(テノール)、クルト・モル(バス)と人を得た独唱も聞きごたえのあるものでした。

2021年に没後40年を迎えるカール・ベームとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏するモーツァルトの交響曲第40番の第1楽章と第4楽章は、作品の隅々まで入念に彫琢するベームの悠揚迫らざる音楽作りの精華と言えるでしょう。

最後に放送されたカルロス・クライバーとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるブラームスの交響曲第2番は、細部の大胆さと全体の緻密さをクライバーの音楽への喜びが包み込む演奏でありました。

また、番組では、指揮者の高関健さんとヴァイオリン奏者の篠崎史紀さんが解説を行い、指揮者と演奏者の視点からの指摘や所感を行っており、大変に印象的でした。

この日の放送は、一面においてNHKなどが推進する8K映像の宣伝という性格を持つものの、他面では過去の映像を次世代に伝えるための試みの一環でもありました。

今後、同様の取り組みを通し、種々の演奏が確実に後世に継承されること、さらにこうした努力の一端を披露する場として、『クラシック音楽館』のような番組が活用されることが期待されるところです。

<Executive Summary>
What Is Meaning of a TV Programme "Classical Music Hall" and Its Remarkable Possibility? (Yusuke Suzumura)

A TV programme Classical Music Hall broadcasted by NHK Educational featured selected concerts of past conductors on 16th August 2020. It has a remarkable possibility to bring the past records to the future generations.

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