安倍派は集団指導体制からの移行を実現できるか

昨日、自民党の世耕弘成参院幹事長は、記者会見で「5人で話し合いを進めたい。そう遠くなく何らかの結論を導き出したい」と発言し、会長が空席の安倍派の体制を巡り、自らを含め5人で検討する考えを示しました[1]。

安倍派は昨年7月8日(金)に会長であった安倍晋三元首相が逝去して以来、会長が不在のままでした。

この間、会長を決める動きがあったものの決定的な人物がおらず、あえて一人を選べば派の分裂の可能性もあるため、集団指導体制がとられたままでした。

今回の世耕氏の発言は、一つの目安とされている今年7月8日(土)の安倍氏の一周忌までに新会長を選出できず、これからも当分の間は集団指導体制が維持されることを示唆するものです。

確かに、安倍派の「5人衆」とされる松野博一官房長官、高木毅国会対策委員長、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、そして世耕氏は、政府や党の要職を占めています。

しかし、国民的な知名度がなかったり、閣僚や党首脳としての顕著な実績がなかったり、あるいは一派を率いるだけの資金力がなかったりと、いずれも自民党の最大派閥の長に求められる十分な力を備えていないというのが実情です。

そのため、あえて誰か一人に派閥の運営を任せるのではなく、単独では力不足でも5人が力を合わせればそれぞれの長所を伸ばし、短所を補い合えると考えることは、適切な判断と言えるでしょう。

一方で、2024年9月の自民党総裁選挙に誰が立候補するのか、あるいは今夏に予定されている内閣改造と党役員人事で誰が交渉役となるのかといった点を考えれば、集団指導体制のままでは派の求心力を維持し続けるのが難しいことも明らかです。

それだけに、これからはいつまで集団指導体制を継続するのか、あるいは7月8日にあわせ、その前後にたとえ名目だけでも新たな会長を決定するのか、安倍派の動向が注目されます。

[1]安倍派体制「5人で結論」. 日本経済新聞, 2023年6月28日朝刊4面.

<Executive Summary>
Who Will Be the Next Leader of the Abe Faction? (Yusuke Suzumura)

Mr. Hiroshige Seko, the Secretary-General for the LDP in the House of Councillors, pointed out that the new leadership of the Abe Faction will be discussed by the 5 executive members of the faction on 27th June 2023. On this occasion, we examine a possibility of the selection of the new leader of the LDP's largest faction.

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