NHK交響楽団2021年6月東京芸術劇場公演

本日は、19時30分から21時10分まで、NHK FMでNHK交響楽団の2021年6月東京芸術劇場公演を聴取しました。

今回は今年6月11日(金)に行われた公演の実況録音が放送され、前半にフィンジの前奏曲とブリテンのシンフォニア・ダ・レクイエム、後半にブルックナーの交響曲第0番が演奏されました。指揮は下野竜也でした。

第1曲目のフィンジは弦楽合奏による小編ながら繊細で緻密な作品を丁寧に演奏する様子からは、下野の音楽作りへの感性の豊かさと、楽団との相性の良さが窺われました。

また、続けて演奏されたブリテンは3つの楽章が大きな渦を形作りながら、時に奔流となり、時に小さな滴へと姿を変えてハープの平穏さに満ちた旋律に導かれて終わりを迎える、聞き手の注意を逸らさない集約力の高い仕上がりとなりました。

後半のブルックナーは金管楽器の密度の高さとティンパニの安定した打音が作品に生気を与え、惰性に流れず、しかも決して器用ではないブルックナーらしい愚直さを備えた演奏を生み出しました。

任意の楽章からどこか1小節を取り出すだけでもすぐに誰が作曲したか分かるのがブルックナーの交響曲であることを考えれば、今回の演奏はブルックナーをブルックナーらしく描き出した、過不足のない内容でした。

いずれも作曲者の主要な作品ではなく、その死後に人々の耳目に触れたという意味で演奏の頻度が決して高くない3曲を取り上げたという点においても、今回の公演の持つ意義は決して小さくなかったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
Stage Review: NHK Symphony Orchestra June Concert at the Tokyo Metropolitan Theatre (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the June Concert at the Tokyo Metropolitan Theatre on 11th June and broadcasted via NHK FM on 28th June 2021. In this time they performed Finzi's Prelude, Britten's Sinfonia da requiem and Brucner's Symphony "Nullte". Conductor was Tatsuya Shimono.

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