「大谷のトレード見送り」は大谷翔平選手とエンゼルスにどのような影響を与えるか

現地時間の7月26日(水)、大リーグのロサンゼルス・エンゼルスに所属する大谷翔平選手について、球団がトレードの候補から外したことが報じられました[1]。

エンゼルスは2014年にアメリカン・リーグ西地区1位になったのを最後にプレーオフに進出しておらず、今季も現時点で地区3位、ワイルド・カード争いでも6番目と劣勢に置かれています。

一方、大谷選手は打者としても投手としても現在の大リーグを代表する一人であるとともに、かつて10月のポストシーズンへの進出をかけた、白熱した9月を過ごしたいという趣旨の発言をするなど、エンゼルスがトレード市場での価値の高い大谷選手を放出し、複数の若手選手を獲得して将来の球団の中核に据える可能性が指摘され続けてきました。

実際、昨年も大谷選手の放出の可能性が取りざたされるなど、球団としてはいかに大谷選手を効果的に活用するかが大きな課題となっていました。

これに対し、今回はシカゴ・ホワイトソックスからルーカス・ジオリト選手とレイナルド・ロペス選手を獲得しており、少なくともエンゼルスが今季は大谷選手を放出せず、しかも選手を補強することでプレーオフへの進出を目指している様子が窺われます。

もちろん、大谷選手が他球団に移籍すれば、選手としての活躍の面でも球団の知名度の点でも、さらに放映権料や物品の販売等でも、エンゼルスにとって大きな利益が失われることになります。

ただし、昨年3月に施行された最新の労使協定では、トップ・プロスペクトを開幕ロースターに登録し、その選手が新人王投票で3位以内もしくはMVP投票やサイ・ヤング賞投票で5位以内に入った場合、その選手が所属する球団は翌年のドラフトで追加の指名権を獲得できるという新制度が設けられています。

従って、再建を図ろうとする球団にとっては既存の選手を放出して将来的な活躍が有望視されるトップ・プロスペクトを獲得することは長期的な視点で見れば重要な措置となります。

それにもかかわらずエンゼルスが大谷選手のトレードを見送ったことは、一面において現在の球団に求められている実績のある先発投手と救援投手の補強という喫緊の課題を解決しようとする試みであり、他面において大谷選手が求めてきたプレーオフへの進出を目指す取り組みとなります。

また、今季終了後に大谷選手がフリーエージェントの資格を獲得することを考えるなら、シーズン途中に放出するのではなく、オフシーズンの交渉で残留が決まれば今後も中心選手としての活躍を期待し、他球団に移籍する場合は先方からドラフト上位の指名権の獲得などの対価を得て球団の活性化に臨もうとするエンゼルスの思惑が推察されます。

それだけに、今回のエンゼルスの判断がどのような結果をもたらすか、あるいは米国東部時間の8月1日(火)の18時の期限までに電撃的な移籍があり得るのか、今後の推移が注目されます。

[1]Angels take Shohei Ohtani off trade market as deadline approaches: Reports. The Athletic, 26th July 2023, https://theathletic.com/4724725/2023/07/26/shohei-ohtani-angels-trade-market/ (accessed on 28th July 2023).

<Executive Summary>
Will Mr. Shohei Ohtani Be a Member of the Angels by the End of 2023? (Yusuke Suzumura)

It is said that the Los Angeles Angels take Mr. Shohei Ohtani, the MVP winner of 2021, off trade market on 26th July 2023. On this occasion, we examine a background of this decision and the possible changes.

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