『クラシックの迷宮』の特集「ロックとクラシック」が見つけた「宝の山」

本日NHK FMで放送された『クラシックの迷宮』は「ロックとクラシック」と題して特集が組まれました。

司会の片山杜秀先生によれば、「ロックとクラシック」というとき、「クラシックからロックへのアプローチ」「ロックからクラシックへのアプローチ」そして「ロックとクラシックのフュージョン」があります。そして、今回は主として「ロックからクラシックへのアプローチ」と「ロックとクラシックのフュージョン」が取り上げられました。

具体的に取り上げられたのはフランク・ザッパとキース・エマーソンで、ともにロックを活動の基盤とした2人の中にどのような形でクラシックの要素が取り込まれたのか、あるいはクラシックとの融合が試みられたのかが検討されました。

ロックとクラシックの関わりそのものについては、例えば芥川也寸志が『音楽の基礎』(岩波書店、1971年)の中で、現代音楽が調性感をなくす一方でポピュラー音楽が調性を維持している点などを挙げ、両者の垣根の低さを指摘したり、スティーヴ・ライヒが2018年に「アンサンブルとオーケストラのための音楽」を手掛けて管弦楽とエレキ・ギターとの融合を改めて模索したりするなど、決して真新しい話題ではありません。

しかし、片山先生の着眼点の鋭さは、例えばザッパがバレエ音楽やヴァレーズ、ストラヴィンスキーなどの影響を受け、その作品の中にはストラヴィンスキーの『兵士の物語』に通じる、小さな編成で最大の効果を残す音楽を作ったことを挙げる点に象徴的に示されています。

あるいは、キース・エマーソンがエマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP)のためにコープランドやプロコフィエフの作品を編曲し、あるいは映画『ゴジラ FINAL WARS』の中で伊福部昭の『ゴジラのテーマ』を編曲した様子を紹介するところも、ロック界の人物がいかにしてクラシック音楽に分類される音楽を変容させるかを知るために重要な手掛かりとなりました。

一方、「クラシックからロックへのアプローチ」については番組の最後にキング・クリムゾンの『レッド』をモルゴーア・クァルテットが弦楽四重奏で演奏した録音を取り上げ、原曲の持つ抒情性と即興性とが弦楽四重奏というクラシック音楽の典型的な表現形式に適合するだけでなく、新たな表情を加えることが力強く訴えられました。

「ロックとクラシックの関わりというと例えばデヴィッド・ボウイがいたりと、なかなか楽しい宝の山でございまして、また続きをと考えております」という片山杜秀先生の言葉が予告するように、今後の続編が大いに期待された、今回の特集「ロックとクラシック」でした。

<Executive Summary>
The Featured Programme of the "Labyrinth of Classical Music" Implies the Deep Relationships between Rock Music and Classical Music (Yusuke Suzumura)

The NHK FM's programme "Labyrinth of Classical Music" featured the relationships between Rock Music and Classical Music focusing on some remarkable composers including Frank Zappa and Keith Emerson. It was a remarkable opportunity for us to understand the importance of the closeness of these two categories.

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