NHK交響楽団第1973回定期公演

昨日、サントリーホール大ホールにおいてNHK交響楽団の第1973回定期公演が行われ、NHK FMの実況中継で鑑賞しました。

今回は前半にグリンカの歌劇『ルスランとリュドミーラ』序曲、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、後半にドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』が取り上げられました。ピアノ独奏は河村尚子、指揮はファビオ・ルイージでした。

いずれもよく知られた作品が揃った今回は、終始躍動感を失わなかったグリンカ、冒頭から陰影に富み、情感豊かな河村の演奏と抑制的な伴奏の対比が印象的なラフマニノフ、そして木管楽器の実直さと第4楽章のホルンの力強さに加えティンパニを強調する特徴的なドヴォルザークと、曲想の違いを巧みに活かした音楽が披露されました。

特にラフマニノフは第1楽章の中盤から後半にかけて河村の演奏に広がりが生まれる中で、その広がりを包み込むように伴奏が寄り添うことで、音楽の軸が見失われることがなく、しかも作品の劇的な要素が鮮やかに描かれ、後味の良い仕上がりとなりました。

ドヴォルザークにおけるティンパニの強調については賛否が分かれるところではあるものの、かえって『新世界』の持つ素朴で芯の太い交響曲という側面を知るためには、一つの重要な手掛かりを与えたと言えるでしょう。

時に「通俗名曲」とも称される作品だからこそ、どのような姿勢で演奏に臨み、いかなる音楽を作り上げるかは、絶えず聴衆の関心の対象となります。

その様な中で、耳に馴染んだ音楽の中から新しい要素を取り出そうとしたこの日の公演は、楽団と指揮者の意欲の高さの一端を象徴的に示したと言えるでしょう。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 1973rd Subcription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 1973rd Subscription Concert at the Suntory Hall and broadcasted via the NHK FM on 14th December 2022. In this time they performed Glinka's Ruslan and Lyudmila overture, Rachmaninoff's 2nd Piano Concerto, and Dvorak's 9th Symphony. Solo piano was Hisako Kawamura and conductor was Fabio Luisi.

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