NHK交響楽団第1989回定期公演

昨日、NHK FMでNHK交響楽団の第1989回定期公演の実況録音の放送を鑑賞しました。録音日は2023年9月9日(土)で、会場はNHKホールでした。

今回は、いずれもリヒャルト・シュトラウスの作品が取り上げられ、前半に交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』と『ブルレスケ』、後半に交響的幻想曲『イタリアから』が演奏されました。『ブルレスケ』のピアノ独奏はマルティン・ヘルムヒェン、指揮はファビオ・ルイージでした。

リヒャルト・シュトラウスは指揮者と演奏者の得意とする作曲家の一人であり、新しい楽季の最初の公演を飾るにふさわしい選択であったと言えるでしょう。

ただし、『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』と組み合わされた作品が、演奏頻度の比較的低い『ブルレスケ』と『イタリアから』というところに両者の自身のほどが示されていました。

実際、『ブルレスケ』は独奏のヘルムヒェンが難度の高い旋律を軽やかに弾きこなすとともに、伴奏も冒頭の4台のティンパニの演奏から華やかな最終小節に至るまで緩急を自在に操り、独奏者との絶妙な位置を取り続けることに成功しました。

後半の『イタリアから』は第4楽章の『フニクリ・フニクラ』の愉快な変奏に注意が惹きつけられそうになるものの、作品全体を貫く、明るい太陽のきらめきを印象深く表現する技法は、先人の音楽を引き受けつつ自らの新しい音楽を作り出そうというリヒャルト・シュトラウスの強い意気込みを示すものです。

このような特徴を持つ作品を、時に微笑みを描き、時に懊悩する姿を表現しつつ演奏したところに、ルイージとNHK響の抑制された熱情がよく示されていました。

もちろん、第1曲目の『ティル・オイレンシュピーゲル』も後味の良い仕上がりで、細部まで慣れた手つきで音楽を組み立てる様子は頼もしさを感じさせるものでした。

2023/24シーズンの公演への期待を高めた、今回の公演でした。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 1989th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK symphony Orchestra held the 1989th Subcription Concert at the NHK Hall on 9th and 10th September and broadcasted via the NHK FM on 14th September 2023. In this time, they performed Richard Strauss' three works: Till Eulenspiegel’s Merry Pranks, Burleske, and From Italy. Solo piano was Martin Helmchen and conductor was Fabio Luisi.

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