『クラシックの迷宮』が示した大中恩の童謡の発展に対する大きな貢献

今日のNHK FMの『クラシックの迷宮』は「「サッちゃん」と「犬のおまわりさん」~大中恩生誕100年~」と題し、今年7月24日に生誕100年を迎える作曲家の大中恩を特集しました。

『サッちゃん』や『犬のおまわりさん』など、誰もが一度は耳にしたことのある童謡の作曲者として知られるのが大中恩です。

従って、今回の特集で『おなかのへるうた』のようにやはり人口に膾炙した作品から、『ろばよ走れ』や『しおじゃけのうた』のように取り上げられる機会の少ない曲まで、動揺が数多くそろえられたのは当然のことでした。

その一方で、『サッちゃん』や『おなかのへるうた』を作詞した小説家の阪田寛夫がいとこであり、さらに父の大中寅二も作曲家として島崎藤村が作詞した『椰子の実』などを手掛け逸話を実際の作品を紹介することを通して、童謡は子ども向けの歌ではあっても子ども騙しの歌ではないという大中の真摯な姿を鮮やかに描き出すのは、司会の片山杜秀先生ならではの試みでした。

実際、日本語の語感と情感豊かな語彙を重視して作詞を行ったまど・みちおの作品を集中して取り上げたことは、大中の作曲活動が目指すべき場所を同じくする作詞家との協働によって成り立っていたことを力強く説くものでした。

さらに、小鳩くるみの歌唱による『サッちゃん』を最初に紹介し、最後に平野レミ、太田裕美、矢野顕子の3人がそれぞれ歌唱した版を取り上げ、広く親しまれる作品が同様だけでなくシャンソンやポップスなど、様々な分野の歌手によって歌い継がれていることを示したことも、大中の音楽が幅広い歌い手の異なる音楽性にも対応する柔軟性を持つという事実を示していました。

あるいは、NHKの番組のために大中が書いた様々な音楽を取り上げたことも、限られた小節数の中で需要に応じた作品を作れる柔軟さの一端を明らかにするものであったと言えるでしょう。

小鳩くるみや『ろばの歌』などを歌唱した小池朝雄が青山高校の卒業生であり、佐藤春夫の作詞による『しぐれに寄する叙情』を歌った畑中良輔が青山高校の前身である旧制東京都立青山中学校の音楽教師を務めていたことと合わせて、青山高校にかかわりの深い内容となったことも、大変に喜ばしいものでした。

子どもの健全な成長に資する音楽としての童謡の可能性を広げるとともに、品性を高めた大中恩の努力と成果を説得的に示した今回の『クラシックの迷宮』は、いつにも増して意義深い内容になったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
The Featured Programme of the "Labyrinth of Classical Music" Emphasises Megumi Onaka's Great Efforts and Achievements to the Development for the Songs for Children (Yusuke Suzumura)

The NHK FM's programme "Labyrinth of Classical Music" featured Megumi Onaka and celebrated his 100th birthday. It was a remarkable opportunity for us to understand Onaka's great efforts and contributions for the development of the songs for children.

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