三枝成彰の作曲家としての多彩さを示した『クラシックの迷宮』

去る9月3日(土)のNHK FMの番組『クラシックの迷宮』は「作曲家・三枝成彰の軌跡~傘寿(80歳)を迎えて~」と題し、今年7月8日(金)に80歳となった三枝成彰を讃える特集が組まれました。

三枝成彰の作品というと、1997年の歌劇『忠臣蔵』やテレビアニメ『機動戦士Zガンダム』の音楽などで広く知られます。

しかし、司会の片山杜秀先生が番組の冒頭で「『忠臣蔵』に至るまで30年のキャリアがあるのでして」と指摘するように、今回の特集では十二音技法や電子楽器を多用する「前衛音楽家」としての側面に注目し、歌曲やロックオペラ『サロメ』などの他の歌劇を取り上げるところは、この番組ならではの趣向でした。

また、選曲の中に歌謡曲から人形劇の劇伴までを含めたことは、三枝の手掛けた作品の幅の広さを示すとともに、歌劇『忠臣蔵』の持つ抒情的な要素が歌謡曲的な性格に通じるものであることを間接的に示します。

しかも、代表作である『忠臣蔵』を解説の中で言及するものの、番組中では音源を紹介しないという点からは、存命の作曲家を評価する際に代表的な作品にのみ注目することは全体像を見失わせかねないということを聴取者に教える、教育的な価値のある措置でした。

その意味で、今回の特集は「作曲家」と関することで文筆や言論など様々な活動を行う三枝成彰の作曲家としての多層的な姿をありありと描き出すことに成功していたと言えるでしょう。

<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Shows Multiple Figures of Professor Shigeaki Saegusa and His Works (Yusuke Suzumura)

A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcasted via NHK FM featured Professor Shigeaki Saegusa to celebrate the 80th Anniversary of his birth on 8th July 2022. It might be a meaningful opportunity for us to understand multiple figures of Professor Saegusa and his works.

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