自民党総裁選に「現代のバクさん」は現れるか

現在、自民党では9月17日に告示される総裁選挙を巡り、立候補を表明した議員や検討中の議員の動向が連日のように報じられています。

従来は現職の菅義偉首相に対して岸田文雄前政調会長が挑戦するという構図であったものの、菅首相が出馬の辞退を表明したために、当初は推薦人の集約が難しいと予想された河野太郎国務大臣や高市早苗前総務大臣などの立候補の可能性が高まり、選挙戦は新たな展開を見せています。

ところで、水面下では各派閥や支持者の集団が調整に動いているであろうものの、現時点で話題となるのは各議員の動向ばかりで、その背後でそれぞれの人物をどうしても総裁にしたいと奔走する顔はいまだ見えません。

告示後に各勢力の角逐は激しさを増し、種々の政略が繰り広げられることでしょう。

ここで思い出されるのが、1956年に岸信介、石橋湛山、石井光次郎が争った総裁選挙で、石橋陣営の中核をなした石田博英の名前です。

選挙戦の一切を引き受け、決選投票では258票を獲得して251票の岸を破り、岸をして「彼が石橋陣営の総参謀でした。何といっても「ばくえい」(博英)君の力だろうね。八十%ぐらい、いや百%といってもいいくらいだ」[1]と言わしめたのが石田です。

そのような取り組みの中には報道陣には「言えないようなこと」[2]も含まれています。

もちろん、1956年当時と現在とでは政界を取り巻く状況は大きく変わり、政治資金の問題も顕著な変化を示しています。

それでも、「何としてでもこの人を総裁に」という意志の強さは時代のいかんにかかわらず重要な要素です。

それだけに、各候補者のためにわが身を顧みず献身的に戦い抜く人材の有無が、今後の選挙戦に少なからず影響を与えることでしょう。

[1]原彬久, 岸信介証言録. 毎日新聞社, 2003年, 102頁.
[2]松山幸雄, 石橋湛山とケネディ. 自由思想, 158号, 2020年, 4頁.

<Executive Summary>
What Is an Important Element for the LDP Presidential Election? (Yusuke Suzumura)

The LDP Presidential Election will be held on 29th September 2021. In this occasion we examine an important element for candidates to win the campaign.

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