『ららら♪クラシック』の特集「発表!あなたが選ぶベートーベン ベスト10」について思ったいくつかのこと

12月11日(金)にNHK教育テレビで訪ソされた『ららら♪クラシック』の特集「発表!あなたが選ぶベートーベン ベスト10」の役割については、昨日の本欄で取り上げました[1]。

そこで、今回はこの特集を巡る雑感をご紹介します。

2012年4月から始まった『ららら♪クラシック』は、当初の放送時間は1時間であったものの2013年度から30分の番組となり、今日に至っています。また、放送日も日曜日から土曜日、そして2017年4月からは金曜日へと移っており、番組そのものは開始から8年を経ているものの番組の枠組みは絶えず変化していることが窺われます。

その様な中で、司会者が現在の高橋克典さんとなった2017年4月以降、放送時間が60分に拡大されたのは初めてのことでした。

器楽管弦楽を対象とする大型番組は『クラシック音楽館』があり、『ららら♪クラシック』は啓蒙的、あるいは初学者向けという傾向のある番組であることを考えれば、通常の枠を拡大して放送したことは、それだけ制作者が今回の特集に力を入れていたことを推察させます。

また、ヘルベルト・ブロムシュテット、ラン・ラン、千住真理子、山下洋輔などの音楽家が推奨するベートーヴェンの作品の紹介の欄も設けられたのは、特集企画にふさわしい試みでした。

さらに、番組の特設ウェブサイトでNHKの「ベートーベン250プロジェクト」のアンバサダーを務める俳優の稲垣吾郎さんや作曲家の久石譲さんがベートーヴェンの作品に対する寸評を寄せており、著名人のベートーヴェンに対する考えの一端を知ることが出来ます。

例えば、稲垣吾郎さんは、交響曲第9番「合唱付き」に対して、次のように述べています[2]。

「歓喜の歌」のメロディーは、一度聴けば誰でも口ずさめるほど単純なものなのに、まるで“人類の遺産”のような偉大さと輝かしさ、圧倒的なスケールの大きさがあって、僕の中では「これぞベートーベン!」というイメージです。せっかくの250周年なので、ぜひ一度全部聴いてもらえたらと思っています。

あるいは、久石譲さんは交響曲第5番に寄せて、以下のような談話を寄せています[3]。

ベートーベンは名曲揃いで、その中で3曲を選ぶと言ってもなかなか難しい。なので今回は交響曲に限って選びました。交響曲の第5番は別格、枠に入らない番外、と言って良い存在でもありますけど、ベスト3ならば、やはりこの曲を入れないと。「ジャ・ジャ・ジャ・ジャーン」という小さい音型を積み重ねて、巨大な交響曲を組み上げてゆく。論理的に考えられているけど、音楽はエモーショナル。私が思う理想的な交響曲が第5番なんです。

こうした談話を通して、より多くの人がベートーヴェンの作品に興味を抱き、さらにベートーヴェンを手掛かりとして器楽・管弦楽の作品に関心を持つとすれば、番組の試みは「ららら」という軽やかな題名にふさわしい、しなやかな取り組みであると言えるかも知れません。

[1]鈴村裕輔, 『ららら♪クラシック』の特集「発表!あなたが選ぶベートーベン ベスト10」が果たした大きな役割. 2020年12月12日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/785e00655df0c4827d001f81d6669f74?frame_id=435622 (2020年12月13日閲覧).
[2]交響曲第9番「合唱つき」稲垣吾郎さんコメント. NHK, 掲載日未詳, https://www.nhk.or.jp/lalala/beethoven250/#comment_01 (2020年12月13日閲覧).
[3]交響曲第5番「運命」久石譲さんコメント. NHK, 掲載日未詳, https://www.nhk.or.jp/lalala/beethoven250/#joe_02 (2020年12月13日閲覧).

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of TV Programme "La La La Classic" Celebrating the 250th Anniversary of Beethoven's Birth (Yusuke Suzumura)

A TV programme La La La Classic was broadcasted via NHK Educational on 11th December 2020. In this occasion I express my impressions for the programme.

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