NHK交響楽団第1971回定期公演

昨日は、NHKホールにおいてNHK交響楽団の第1971回定期公演が開催され、NHK FMの実況中継で鑑賞しました。

今回は、前半にワーグナーの『ウェーゼンドンクの5つの詩』、後半にブルックナーの交響曲第2番(初稿版)が取り上げられました。独唱はメゾ・ソプラノの藤村実穂子、指揮はファビオ・ルイージでした。

現在の日本を代表するワーグナー歌手として広く知られた藤村を迎えての『ヴィーゼンドンクの5つの詩』は、情感豊かな歌詞と劇的な構成に妙味のある作品であり、緩急を自在に操りつつ一節一節を丁寧に歌い上げる独唱者の姿は、聞きごたえがあるだけでなく、後味の良い仕上がりとなりました。

特に伴奏が音楽の下地を滑らかに作りつつ、後景に徹するのではなく時に藤村の横に並ぼうとするかのような迫力を示したことは、演奏に一層の奥行きを与えました。

後半のブルックナーは、ルイージが得意とする作曲家であるというだけに止まらない演奏で、任意の一部分を切り取ってもブルックナーと分かる特徴的で濃密な音楽が、改稿によって姿が整えられる前の一種の粗削りな側面を強調するかのように仕立てられました。

また、70分を超える大作ながら一貫して緩慢さに流れることがなく、第4楽章の最後の8小節でさらなる力強さを発揮した点は、ルイージが楽団との間でよく意思の疎通を図り、演奏者の力をよりよく引き出していることを推察させるものでした。

このように、この日の公演も「生まれはイタリアながら、主に活躍しているのはアルプスの北側」というルイージの持ち味が過不足なく発揮されており、いずれこうした表現が不要になるほどその存在が聞き手にとって親しくなることが予感されました。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 1971st Subcription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 1971st Subscription Concert at the NHK Hall and broadcasted via the NHK FM on3rd December 2022. In this time they performed Wagner's Wesendonck Lieder and Bruckner's 2nd Symphony (First Version). Solo mezzo soprano was Mihoko Fujimura and conductor was Fabio Luisi.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?