「本土復帰50周年記念」で考える「沖縄問題のいま」

昨日、沖縄県が1972年5月15日に米国の統治から日本に復帰してから50年目を迎えました。

沖縄県宜野湾市で行われた記念式典では、岸田文雄首相が「強い沖縄経済」の実現や在日米軍基地の負担軽減への取り組みを強調する一方、玉城デニー知事が自立型経済の実現が途上にあることや「沖縄を平和の島とする」という目標が依然として達成されていない指摘するなど、沖縄県を取り巻く問題の解決への道のりの遠さが示されました[1]。

確かに、本土復帰から50年を経た現在も在日米軍基地の7割が所在し、1人当たりの県民所得が国民所得の7割に留まる現状[1]は、沖縄県の経済構造の問題を物語ります。

それとともに、こうした様子は、例えば基地の負担や経済格差の問題への理解が沖縄県の内外で異なること、あるいはこれらの問題は沖縄県のみの課題であって、域外の人々にとっては興味と関心の対象ではないと考えられていることを示唆します。

実際、沖縄県に対して他の都道府県の出身者が抱く印象は観光地や独特な文化であって、多くの場合は基地問題や経済格差問題ではないと言えるでしょう。

しかし、こうした見方は沖縄県の置かれた状況の一部を描き出すものの、他の部分が抜け落ちていることに変わりはありません。

それだけに、式典にオンライン形式で臨席された今上陛下が「沖縄には、今なお様々な課題が残されています。」と沖縄県に対するわれわれの理解の不十分さを明確に指摘し、「今後、若い世代を含め、広く国民の沖縄に対する理解が更に深まることを希望する」[2]と国民一人ひとりが沖縄県の問題に対してどのように臨むべきかを要望したことの意義は大きなものです。

その意味でも、節目の年を手掛かりとして、たとえわずかであっても現在の沖縄県の姿を様々な側面から検討することは、重要な取り組みとなるのです。

[1]首相「強い経済を実現」. 日本経済新聞, 2022年5月16日朝刊1面.
[2]沖縄復帰50周年記念式典(オンラインにて御臨席). 宮内庁, 2022年5月15日公開, https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/90#368 (2022年5月16日閲覧).

<Executive Summary>
What Is an Important Attitude for Us to Examine the "Okinawan Issues"? (Yusuke Suzumura)

The 15th May, 2022 is the 50th Anniversary of its return to Japan. In this occasion we examine an important attitude for us to understand the "Okinawan Issues".

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