「新たなる伝統」への第一歩を踏み出した「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」

現地時間の8月11日(木)、大リーグのシンシナティ・レッズがシカゴ・カブスをアイオワ州ダイアーズビルの仮設球場フィールド・オブ・ドリームスに迎え「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」が開催され、カブスがレッズを4対2で下しました。

2020年に開始の予定であったこの試合が新型コロナウイルス感染症の感染拡大のために翌年に延期されたこと、大リーグ機構が精力的に宣伝活動を行い、試合の原型となった映画『フィールド・オブ・ドリームス』(原題:Field of Dreams)の主演俳優であるケビン・コスナーも登場するなど、球界を挙げた取り組みが奏功したことは周知の通りです[1]。

試合が行われるようになってから2年目となる今回は、昨年のニューヨーク・ヤンキース対シカゴ・カブスに代わり、球場が所在するアイオワ州に拠点を置くカブスと、1882年に誕生した古参球団であるレッズという新しい組み合わせによって行われました。

これは、球界の最高峰であるヤンキースと、映画の題材となった1919年のブラックソックス事件の舞台となったホワイトソックスの対戦という話題性の高さによって新たな企画への注目度を高めるという1年目の取り組みを経て、さらに試合の価値を高めつつ大リーグにとって新たな伝統となる一戦にしようとする機構側の目論見を反映させたものです。

それだけに、開催場所が仮設であることは大きな問題であり、素朴で興行的ではない、より魅力ある施設を用意することで一層試合への注目度を高めようと、機構は球場の改修が終了する2024年までフィールド・オブ・ドリームスでは試合を行わないことを明言しています[2]。

こうした点からも、「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」はオールスター戦や選手の移籍期限が終わった後、話題が乏しくなる8月に人々の目を大リーグに惹きつけるための、新たな、そして役割を与えられていることが分かります。

人々の過去への郷愁や憧憬を手掛かりに新たな商品を生み出そうとする大リーグの戦略は、実に巧緻で体系的なのです。

[1]鈴村裕輔, 新商品「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」にみる大リーグの商魂. 日刊ゲンダイ, 2021年8月31日号27面.
[2]MLB won't return to Field of Dreams for 2023. The Sporting News, 11th August 2022, https://www.sportingnews.com/us/mlb/news/mlb-field-dreams-2023-iowa-site/gqvocdj00xzl5ilusf5r0sio (accessed on 12th August 2022).

<Executive Summary>
The MLB Is Promoting a Value of the Field of Dreams Game (Yusuke Suzumura)

The Field of Dreams Game was held at Dyersville on 11th August 2022. On this occasion we examine a plan of the MLB to promote a value of the game as a new traditional event.

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