【開催報告】野球文化學會第4回研究大会

本日、13時から17時40分まで、オンライン形式により野球文化學會の第4回研究大会が開かれました。

今回は、第1部の研究発表が3件、第2部のシンポジウムで基調講演1件とパネリストによる報告2件、そして質疑応答が行われました。

各報告の概要は以下の通りでした。

********************
第1部 研究発表(座長:鈴村裕輔[名城大学])
(1)石村広明(桃山学院大学)/スツールボールの教材化についての検討
クリケットやラウンダーズの祖型にあたり、14世紀までにはイギリスで始まったスツールボールについて、「打てない」、「捕れない」、「投げられない」、「男女による身体能力の差」といったベースボール型スポーツの問題を克服するため、下手投げによるスツールボールを実際の体育の授業に取り入れ、ベースボール型スポーツの教材化の可能性が検討された。その結果、「下手投げによる投球」、「全てフェアグランド」、「走塁・守備の簡素化」、「競技の本質の維持」という利点と、「仲間を進塁させたり状況に応じた走塁を行う」、「「集団対集団」という構造」という課題が明らかになるとともに、スツールボールは走塁が強調されていない小学校教育に適していることが推察された。

(2)大森正樹(千葉大学)/タイガースをブランディングした男早川源一の研究
阪神タイガースのシンボルマークなどを手掛けた早川源一(1906-1976)の生涯、作品を類型化して紹介し、1936年の球団発足以来、阪神タイガースではシンボルマーク、球団旗、ロゴ、ユニフォームの縦じま、球団歌『六甲颪』、甲子園球場、が変わらない要素として続いている背景を検討した。その結果、早川の業績が「阪神電鉄の仕事」、「タイガースの仕事」、「野球関連の仕事」、「商業美術の業界活動」、「若林忠志との仕事」、「絵本」、「アマチュアスポーツの仕事」、「スポーツ用品メーカーとの仕事」、「阪神百貨店との仕事」、「その他」に分けられ、今後の研究の課題として「野球界における功績」、「デザイン界における功績」、「阪神モダニズムへの貢献」、「企業内デザイナーの使命」、「ブランディングを1930年代に確立していた事実」の5点が挙げられた。

(3)梶原大輔(高知商業高校)・中村哲也(高知大学)/高知県南国市十市小学校における少年野球普及・強化のための取り組みとこれからの展望~高知県の子どもたちで2025年~2027年に甲子園で優勝するために~
野球の強化と普及、野球を始める土台として少年野球の指導に取り組む試みについて、高知県南国市の市立十市小学校の少年野球チーム十市ファイターズの例に基づき、「大人が本気で協力すれば、強化しながら普及できる」、「成長段階にあった指導を行う(伸びる時期に伸びることをすれば伸びる)」、「正しくトレーニングすればトップアスリートは作れる」という」といった観点から事例報告が行われた。その結果、野球の普及の手掛かりは「この時間にこの場所でやっているという安心感」と「保護者の負担の軽減」であり、野球を好きになることや身体能力を伸ばすこと、大人も子どもも「野球をして遊ぶ」という感覚が重要であり、少年野球を通して地域のコミュニティを形成するとともに、子どもも大人も野球を通して遊べる文化の形成も重要であることが指摘された。

第2部「新型コロナウイルス感染症と野球」(座長:中村哲也[高知大学])
(1)基調講演
柴孝也(東京慈恵会医科大学)/コロナ禍と野球

行政的分類(感染症新法)、原因微生物からの分類、感染部位からの分類、感染経路からの分類という感染症の4つの分類に基づいて新型コロナウイルス感染症の感染症学的観点からの分析が行われた後、プロ野球とJリーグの共同により設置された新型コロナウイルス対策連絡会議の特徴と野球界に与えた影響が考察された。さらに、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)など、過去の感染症の事例を参照し、新型コロナウイルスがSARSのように封じ込めに成功するか、MERSと同じくヒトから動物に感染することで蔓延するか、今後の展望が検討された。

(2)長久保由治(一般財団法人全日本野球協会専務理事)/コロナ禍での野球団体の取り組みと対応について~この1年を振り返って~
2020年1月以来、日本の野球界と関連諸団体が新型コロナウイルス感染症にどのように取り組んできたかが紹介された後、「国際的に通用する野球人材の育成」という全日本野球協会(BFJ)の目的が新型コロナウイルス感染症の拡大の下でいかなる影響を受けたかが報告された。そして、2021年も国際大会の日程が決まらないためBFJにとっては厳しい状況が続く中で、どのような代替案を行うのか、さらに国内では感染症対策を徹底して試合の実施を行う方向性が示された。

(3)鈴村裕輔(名城大学)/新型コロナウイルス感染症と大リーグ
2020年の大リーグが新型コロナウイルス感染症からいかなる影響を受け、どのような対策が行われたかについて、今回と同様に大リーグが外界の作用を受けたスペイン風邪の流行や第二次世界大戦と比較してより大きな影響を被ったことを確認した。また、労使間の問題について、選手年俸の取り扱いについて2021年の労使協定の改定問題を視野に入れ、経営者と選手会が対立する一方、2021年のスプリング・トレーニングの実施問題のように労使双方の利害が一致する場合には、両者が連携したことの意味を検討した。
********************

新型コロナウイルス感染症の影響で開催時期が変更されたものの、学会の内外から多くの参加者が集まったことは、野球文化の発展への寄与という点でも、実に意義深いものと思われました。

<Executive Summary>
The Forum for Researchers of Baseball Culture the 4th Research Conference (Yusuke Suzumura)

The Forum for Researchers of Baseball Culture (FRBC) held the 4th Research Conference via Zoom on 27th February 2021. In this time, three research presentations and symposium entitled with "COVID-19 and Baseball" were available.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?