さらなる取り組みが期待される『クラシック音楽館』の「日本のオーケストラ特集」

昨日は、21時から23時までNHK教育テレビで『クラシック音楽館』を視聴しました。

今回は、7月19日(日)、7月26日(日)の放送に続き、「日本のオーケストラ特集」の第3回目で、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団、東京シティ・フィルハーモニー管弦楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏が取り上げられました。

各団の演奏の寸評は以下の通りです。

神奈川フィルの演奏は川瀬健太郎の指揮によるヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」で、作品の持つ枠組みを最大限に活かしながら音楽の流れを力強く推し進める確かな熱量と、旋律の繊細さを適切に表現した、実のある内容でした。

日本フィルは、この日の放送の中心で、冒頭に1972年に始まった日フィル争議の映像を交えつつ、今年2月に行われた第45回九州公演から熊本での演奏の様子や熊本日本フィルの会の取り組みなどが詳細に紹介されました。

また、演奏は2009年に行われたアレクサンドル・ラザレフの指揮によるハチャトゥリアンの『スパルタクス』からの抜粋で、起伏に富んだ展開の作品と四つに組んで一歩も引かない、劇的な演奏となりました。

大阪響は児玉宏の指揮でバーバーの『管弦楽のためのエッセイ』第1番で、バーバーの代表的な作品ではあっても演奏の頻度は必ずしも多くない作品を表現力豊かに仕上げ、実力の着実な進歩を印象付けるものでした。

東京シティ・フィルの演奏として紹介されたのは飯守泰次郎の指揮によりホルストの『惑星』から「水星」と「木星」で、「通俗名曲」の典型ともいえる作品を陰影深く描き出し、聞きごたえのある内容としていました。

大阪フィルの演奏はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」で、7月26日(日)に放送されたオーケストラ・アンサンブル金沢に続いて2回目の登場となった井上道義の指揮は、細部の大胆さの上に緻密な音楽を作り上げ、聞きなれた作品に新鮮な躍動感と生気を与えました。

ところで、「日本のオーケストラ特集」が対象を広げる、もしくは他の番組が類似の企画を行うなどして、全国の職業楽団の活動がより積極的に取り上げられることが期待されという点については、すでに本欄の指摘するところです[1]。

その意味で、録画の状況にもよるものの、「日本のオーケストラ特集」がさらに進められ、最終的に日本オーケストラ連盟の正会員となっている全団体の演奏が紹介されることが期待されます。

[1]鈴村裕輔, 『クラシック音楽館』の「日本のオーケストラ特集」が示した可能性は何か. 2020年7月27日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/275c4bafbc7b7914bd08628bbdf7f7ef?frame_id=435622 (2020年8月10日閲覧).

<Executive Summary>
A TV Programme "Classical Music Hall" Takes a Remarkable Step to Promote Activities of the Orchestras in Japan (Yusuke Suzumura)

A TV programme Classical Music Hall broadcasted by NHK Educational featured selected concerts of local cities in Japan on 9th August 2020. It is remarkable efforts for each local orchestra and it might be demanded for the NHK to broadcast all professional orchestras in Japan.

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