新しい放送時間でも聴取者に大きな印象を与えた『クラシックの迷宮』の特集「“追いつ追われつ”音楽入門~新入生&新社会人に捧ぐ~」

本日放送のNHK FMの『クラシックの迷宮』は「“追いつ追われつ”音楽入門~新入生&新社会人に捧ぐ~」と題し、過酷な現代社会を生き抜く新入生と新社会人に向けてフーガを中心とする特集が組まれました。

「追いつ追われつ」という表題からも、折に触れて「フーガとは遁走曲と申しまして」と強調する司会の片山杜秀先生の選曲に関心の集まるところです。

今回紹介されたのは、バッハの小フーガやトッカータとフーガ、ベートーヴェンの大フーガから友竹正則の『一年生になったら』(作詞:まどみちお、作曲:山本直純)、フランキー堺の『君も出世ができる』(作詞:谷川俊太郎、作曲:黛敏郎)まで、器楽曲から童謡に至る幅広い作品が紹介されました。

フランキー堺とバッハが並ぶのは「クラシック音楽」を一つひとつの作品の内奥に入り込むことでそれらの特徴を明らかにする『クラシックの迷宮』ならではの試みです。

それとともに、主題の原形と応答とが交互に現れるフーガの特徴に「優勝劣敗のきしみあう競争社会」の縮図を見出すとともに、追い続け、いったんは追い抜くものの抜き去ることが出来なという構造からライヒの『ピアノ・フェーズ』もフーガの範疇に入るとすることは、片山先生の見識の深さを示すものです。

このように、「クラシック音楽」の重要な要素であるフーガが備える多面的な性格を様々な作品から明らかにしつつ、出世することを最大の目標としたサラリーマンたちの努力がどのようになったかを『俺は出世ができない』と『男いっぴき』で示し、最後は口頭で物語の幸福な結末を伝えるなど、聴取者の関心にこたえるための伏線を配して回収する様子も、いつもながらに手慣れたものでした。

2024年度から放送時間が従来の100分から95分に短縮され、今回が新しい時間枠での最初の放送となりました。

それでもこれまでと変わらない委曲を尽くした構成と充実した内容となった『クラシックの迷宮』は、これからも聴取者に新たな知見を与え続けることでしょう。

<Executive Summary>
The Featured Programme of the "Labyrinth of Classical Music" Still Has a Remarkable Impact to the Listeners under the New Time Schedule (Yusuke Suzumura)

The NHK FM's programme "Labyrinth of Classical Music" featured fuga on 6th April 2024. On this occasion, this programme demostrates that it still has a remarkable impact to the listeners under the new time schedule.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?