戸田邦雄の歌劇『伽羅物語』の魅力を伝えた『クラシックの迷宮』の大きな意義

今日のNHK FMの番組『クラシックの迷宮』は「戸田邦雄のオペラ「伽羅物語」~NHKのアーカイブスから~」が放送されました。

1973年に初演された戸田邦雄の歌劇『伽羅物語』に焦点を当て、初演以来再演される機会がないままながら、日本の歌劇の発展の過程を考える上で欠かせない作品の一つとして重要な箇所を抜粋したのが、今回の放送です。

戸田邦雄といえば、日本の作曲家として初めて十二音階を用いて作曲した人物として、あるいは職業外交官として日本の文化外交に携わり、さらに教育者として桐朋学園音楽大学や洗足学園大学で更新を育成したことで知られます。

一方で、その作品が演奏家で取り上げられる機会は少なく、録音や放送の機会にも欠けるのが実情です。

その意味で、戸田は聞き手の多くにとって現在では半ば忘れ去られた作曲家の一人であり、『伽羅物語』が初演のみで終わり、再演されていないこともこうした状況を傍証します。

しかしながら、『クラシックの迷宮』に限れば、2015年8月29日(土)の放送で生誕100年を記念する特集が組まれ、公共幻想曲『伝説』などを紹介した実績があり、戸田の功績を現在に伝える数少ない貴重な役割を担っています。

そのような番組の特長は、『伽羅物語』を指して「初演されたきり再演されていないというがもったいない作品でございまして」という司会の片山杜秀先生の一言が示すように、いかにして忘れ去られ、あるいは埋もれかけている作曲家や作品を聞き手に届けるかという点に明瞭に示されています。

そして、1973年10月の初演時の様子を録音したNHKの音源を活用した今回の放送からは、堀内茂男の原作による重厚な構成と戸田の濃密で洗練された音楽を存分に堪能することが出来ました。

『伽羅物語』が初演から50年を過ぎ、来年は戸田の生誕110年目を迎えます。

こうした節目の時期に、改めて過去の優れた作品を紹介するところに、『クラシックの迷宮』の意義の大きさが改めて示された、今回の放送でした。

<Executive Summary>
The Featured Programme of the "Labyrinth of Classical Music" Shows Kunio Toda's "The Story of KYARA City" as an Unforgettable Opera (Yusuke Suzumura)

The NHK FM's programme "Labyrinth of Classical Music" featured Kunio Toda and his opera "The Story of KYARA City" on 27th July 2024. It was a remarkable opportunity for us to understand this piece's importance of the history of Japanese opera.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?